誰がコンサルティングを買うのか?

業界情報

コンサルティングプロジェクトには高額な費用がかかりますが、見合うだけの価値があるのか?と思う人も少なくないようです。実はクライアント企業の悩みは深く、大きなマーケットが存在します。この記事を読むと、そんな企業の悩みについて知ることができます。

大企業は課題山積

 「コンサルティングのお客さんって、やっぱり中小企業が多いんでしょう?経営課題が多そうですもんねぇ。」これは時々聞かれる質問だが、実は答えはノーだ。コンサルティング会社のクライアントのほぼすべてが大企業である。中小企業に課題が多いことは事実だが、大企業にはそれ以上に課題が山積している。そもそも、課題が何なのかわからないという悩みを抱える企業も多い。それはなぜなのか。

 第一に、大企業は常に様々な競争にさらされているということだ。大企業のビジネスは大きなマーケットを抱えており、誰にとっても魅力的なビジネスだ。当然競合はシェアを奪おうと狙っているし、新たなプレーヤーが、価格や技術などを武器に勝負を仕掛けてくる。さらには海外からも競合・異業種が参入してくる。大企業だからといって安泰ということはなく、戦略を常に磨いていかなくてはならない。

 第二に、大企業にはいたるところに組織のひずみが存在しているということだ。組織や機能が細分化されているため、その単位組織ごとに最適化され、必ず別の組織との利害の衝突が起きる。マーケティングと営業の対立や、マーケティングとファイナンスの対立、営業と研究開発の対立などは典型的だ。さらには変革を進めたい層と、既存の仕組みにしがみつく層の対立も存在する。対立する双方の意見は立場上はもっともでも、会社全体としての最適解でないことは多い。大企業では全社で物事を見る目線が欠けてしまいがちだ。

雇われる2つの理由

 こうした課題の解決に、コンサルタントが雇われることになる。
雇われる場合というのは、自社内で課題解決できない難しい課題を抱えていることもあれば、社外の第三者がやることに意味がある場合もある。

 自社内で解決できない場合というのは、社内にないナレッジを使わなくては解けない課題の時で、例えばデジタル企業の異業種参入など新たな競争に巻き込まれているケースや、海外展開を検討するケース、企業買収を検討するケースなど様々ある。また、中期経営計画策定や、システムのアーキテクチャ企画など、非常に大きなスコープで、高い視座を必要とする場合も、非常に難易度が高くサポートを必要とすることが多い。

 社外の第三者がやることに意味があるケースというのは、さらに2つに分かれる。
1つは対外的な理由である。クライアント企業自身の名前で活動ができないケースだ。業界動向調査で、競合や取引先にインタビューをしなくては情報収集できない場合などが典型的だ。そしてもう1つは社内的な理由で、部門間の利害関係が対立しているため、まともに話し合っても結論が出ないため、第三者に答えを出してもらうことで、組織としての決定を導こうという場合である。

 社内の利害関係の調整のためにコンサル会社を使うなんて、もったいないことをする会社が本当にあるのか?と思うビジネスパーソンもいるかもしれない。もちろん表立って、「部門間の対立が激しくて・・・」と依頼をする人はいないのだが、結局のところ突き詰めるとそれが理由だったということは決して珍しくない。

コンサルフィーを払う業界

 しかし、コンサルティングフィーは高額である。月に数千万円のコストがかかることもある。
大企業だとしても、その費用を払うことができる企業は限られる。業界でいえば、金融業界、通信業界、製薬業界などはこうした費用を賄える業界だが、小売業や消費財メーカーなどは、業界そのものの利益率が低いため、お客さんになりにくい面がある。

 こうした「コンサルフィーを払う」業界は、景気の波や業界の趨勢とともに変化する。コンサルティング会社のパートナー陣は、プロジェクトを売ることを仕事としているが、そのためには当然業界についての知見が求められるため、自分が得意とする業界を中心に活動する。しかしこれは業界の浮き沈みに身をゆだねることになるため、浮き沈みの激しい業界を担当すると、苦しい時期を経験することになる。場合によってはアウト(退職)しなくてはならないという厳しさがある。

 したがって、たいていのコンサルティング会社は、その時期にフィーを払うことができる業界を目ざとく見つけて人を厚く張るものだ。一方で隙間を狙って、マーケットの大きくない業界で、専門性を武器に戦うコンサル会社も存在するため、一概には言えないところもあるが、その時々で儲かる業界がコンサルティングの買い手となる。

コンサル好きの企業

 コンサルティングを買い手業界の中でも、企業ごとに使い方は千差万別だ。部署ごとにお気に入りのコンサルティング会社があり、様々なコンサル会社が出入りしているようなコンサル慣れした企業もあるし、「企業の大事な意思決定を外部に任せるとはけしからん」という外注アレルギーの企業もある。

 実はコンサル会社のお得意様は、両極端な2つのタイプである。
・達成すべき目標が明確な企業(オーナー系企業や外資系企業、数字に厳格な文化のある企業)
・盤石な事業基盤の中で変化を求める企業(公共性の高い企業や高シェア企業)

 前者であれば、目標達成のために手段を選ばず、外部の手を借りようとして依頼が来る。達成すべきことが明確になっており、ダイナミックで面白いテーマになることも多い。後者の場合は、解くべきは経営課題そのものよりも、組織的な課題であることも多く、政治的なバランスに配慮しながら進める必要がある。大きな組織の操縦桿を一緒に握ることができる喜びは大きく、巨大組織の壁を壊せたような仕事ができると、一生モノの仕事になる。

ベンチャーのマーケットはほぼ皆無

 最後に1つだけ付け加えておきたい。ベンチャー向けのコンサルティングをやりたいという人に時々お会いすることがある。確かにエキサイティングな事業を生み出すフェーズにコンサルタントとして役に立てるのなら、非常に面白いであろうが、残念ながらマーケットはほぼ存在しないと言っていい。単純にクライアント企業側にフィーを払う余裕がないことが最大の理由なのだが、ビジネスモデルとしてのむずかしさもある。

 フィーを今払えないクライアント企業に対して、「出世払いで」ということで、エクイティと引き換えにフィーを抑えてコンサルティングするというモデルを模索する人たちもいるようだが、なかなかうまくいかない。エクイティをフィーにするモデルでは、コンサルティング会社自体の財務体質を盤石にしなくてはならなくなる。そのために借り入れなどで補おうとするならば、どうしても資本コスト(≒借りたお金のコスト)を意識せざるを得なくなり、金融機関的な性格も持つようになるため、結局はベンチャーキャピタルのモデルになる。コンサルティングのモデルのままベンチャーを支援するということはなかなか成立しないと考えるべきだろう。

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