《フェルミ推定》日本でのたこ焼き器の年間販売金額は?

フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。
典型的な、マイナーマーケットの市場規模推定の問題です。この記事では、マクロ視点でざっくり推計するアプローチ、ミクロから積み上げるアプローチ、さらに、数字を見る際のフローとストックの考え方などを学ぶことができます。

ヒント

”たこ焼き器が一体どれくらいの人に使われているのか?”というところから考える必要がありますので、まずは日本全体にどれくらいのたこ焼き器があるのかを推計し、次に1年間の販売をいきなり推計するというようにステップを分解します。

その際、どのようにセグメンテーションして考えればいいのか?がポイントになります。一つのやり方としては、特異点を切り分けられるような軸を見つける事です。たこ焼き器の場合はどうでしょうか?

解答例①

たこ焼き器という、さほど普及していない家電製品の市場規模を推計する問題です。冷蔵庫のように一家に一台必ずある家電と違って、”そもそも日本でどれくらいの人が使うものなのか”をいかに論理的に導くかがカギとなります。

問題は1年間の売上を聞いていますが、ストレートに”1年にどれくらいの人が買っているのだろう?”と考え始めると非常に難しくなります。

そこで、”日本全体で何人が持っているか”を推計し、それを買換えサイクルで割るというアプローチで推計します。
今回は、下記の計算式で求めたいと思います。
1.世帯数×2.保有率÷3.買換えサイクル×4.単価

1.世帯数
たこ焼きは全国で一般的に食べられる食べ物ですが、たこ焼き器となると、非常に地域的な偏りのあるものです。
関西ではキッチンに置いてあるかもしれませんが、関東では家電販売店で見かけるようになったのも最近の話です。関西のマーケットとそれ以外のマーケットは別のものとして扱う必要があります。 したがって、世帯数は地域によってセグメンテーションして考えます。

日本の人口1億2,000万人のうち、関西の人口は約2,000万人(この数字は桁を間違えなければ多少ずれてもかまいません)です。一世帯の人数をだいたい2.5人と考えると、関西以外は4,000万世帯となり、関西は800万世帯となります。

2.保有率
では、そのうちどれくらいの世帯がたこ焼き器を保有しているか?について考えます。
さすがに関西でもテレビで言われているような「一家に一台必ずたこ焼き器」というのは都市伝説でしょう。 例えば一人暮らしの世帯には保有していない世帯が多くあると思われます。
平均2.5人という世帯人数を4人家族と単身にざっくり分けるとすれば、全世帯のうち半分は単身、残り半分の400万世帯が家族の世帯と考えて良さそうです。
(家族世帯4人×50% + 単身世帯1人×50% = 平均世帯2.5人)

そうすると、関西と関西以外の場合での保有は下記のように計算できます。
関西の場合:
単身世帯ではたこ焼き器の保有はほとんどないものとして無視し、家族世帯400万世帯のうち半分が保有していると仮定すれば、200万台が関西における保有台数です。
関西以外の場合:
それ以外の地域の1億人はどれくらいの割合で保有しているのか?ですが、これは自分の知り合いの状況をベースに考えてみましょう。関西以外の地域の知り合いを思い浮かべます。
おそらく、10世帯に1世帯も持っていないというのが大抵の人の感覚でしょう。そこで、もう少しコンサバに考えて20世帯に1世帯が持っていると置いてみます。すると、4,000万世帯 × 1/20 = 200万世帯が保有台数ということになります。

関西の200万台と、それ以外の200万台を合計した、合計400万台というのが日本全国のたこ焼き器の台数と推定されます。

3.買換えサイクル
この問題は1年間の数字を聞いていますので、この数そのままでは答えになりません。 買替えサイクルで割る必要があります。
たこ焼き器が一般的な家電販売店で売られるようになってからまだ日が浅いので、買い替えサイクルといってもピンときませんが、類似する家電製品とのアナロジーで考えてみましょう。例えばホットプレートは非常に類似しているので、買い替えまでの期間は同等のはずです。これを5年くらいと置くならば、次のようになります。

400万台÷5年=80万台/年
80万台という数字は、日本の総世帯5,000万世帯の1.6%が毎年購入しているということを意味しており、現実的な水準といえるでしょう。

4.単価
そして最後に、この問題が求めている答えの単位は金額ですので、単価を掛けます。
たこ焼き器はいくらくらいなのでしょうか?これも似た家電とのアナロジーで考えます。 ホットプレートは非常に近い家電ですが、ホットプレートの方が大きく、多機能ですので、これよりもたこ焼き器の方が安いでしょう。

また、機能が単純という意味ではトースターなどと非常に近いですが、トースターの方が広く普及していますので、たこ焼き器の方が多少値が張ると考えられます。

ホットプレートが5,000円くらい、トースターが3,000円くらいとして、たこ焼き器の平均価格をその中間の4,000円と置きます。 すると1年間の販売金額は
80万台×4,000円=32億円

解答例②

解答例①では、日本の総台数から考える、大きな視点からのアプローチを取りましたが、もう少しミクロな視点から別のアプローチを取る事もできます。

例えば、一部のコストがわかれば、そこからビジネスの規模を推定する事ができます。 その業界にでもいない限り、事業のコストなど知る事はできないと思うかもしれませんが、大まかであれば”これくらいかな”という推定が可能なものがいくつかあります。例えば、

 ・広告宣伝費
  -テレビ放映回数から推計
 ・人件費
  -直営店の人数から推計
 ・製造原価
  -材料や製造工程から推計

この問題の場合は、広告宣伝費のコストから割り出してみましょう。ただし、たこ焼き器が大手量販店のチラシに掲載されていることを知っていれば、という条件付きです。誰もが使える方法ではありませんが、考え方としては様々な問題に応用できます。

チラシの全国での掲載枠の販売価格が200万円程度(各店舗4-5万円x40-50店舗くらいのイメージです、往々にしてメーカーがコスト負担します)として、少なくともこの広告コストの元が取れるだけの売上があるという前提をおきます。すると、チラシ掲載時の販売金額が割り出せ、市場規模がわかるというアプローチです。

家電量販店のチラシは頻繁に出稿されています。週末を狙ったものが多いでしょうから、週2回程度、すなわち月10回程度配布されていると考えられます。

さすがにたこ焼き器は毎回のチラシには掲載されていないでしょうから、毎月1度、家電量販店5チェーンのチラシに掲載されているとすると、年間のチラシのコストは約1億2,000万円です。
200万円×12回/年×5チェーン=1.2億円

たこ焼き器の広告宣伝コストが売上に対して10%程度とすると(もしかするともっと大きいかもしれません)、このコストの10倍の売上をあげる必要があるため、必要となる売上は12億円です。

これで利益トントンです。広告宣伝費は固定ですから、利益を出すにはもっと売上がなくてはいけません。

倍の売上があるとすれば売上は24億円で、そのうち倍増した12億円分の売上に対する広告宣伝費の10%分は利益になりますので、24億円に対して5%の利益が出る事になります(間接部門の人件費なども固定費ですが、極めて小さいと考えて無視します)。これは妥当な水準と考えられます。

また、広告以外でも売れている分(目的買いによる購入)を25%程度上乗せすれば、30億円が全体の売上と考えられます。

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