《フェルミ推定》JR東京駅の1日の忘れ物の数は?

忘れ物 フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。日本でも有数の利用者を誇る東京駅の忘れ物の数を推計するという問題です。これはJRの職員のみが知る、Googleで検索しても答えのない問題ですが、このような問題で重要なのは導き出した答えの正確性ではなく、答えに至るまでの計算が、いかに論理的であるかです。

アプローチ

まず思いつくアプローチとしては、東京駅の乗降客数×忘れ物発生率により計算する方法ですが、乗降客数の推定も難しいうえに、忘れ物を誰がどれくらいするかというのは、人それぞれであり、外形的にわかる情報ではないため、妥当性の高い数字を設定しにくいという壁にぶつかります。したがって、このアプローチは他の方法が思い浮かばなかった際の最後の手段とした方が良いでしょう。

マクロ的にアプローチができる方法を考えると、忘れ物は駅で保管をされているため、保管場所のサイズから規模を推定するという方法が考えられます。このアプローチならば、JRの職員ではなくとも、ある程度常識的な推計を基に計算ができ、正確ではないとしても答えまではたどり着けそうです。
忘れ物の中にはすスマホや携帯などのようにすぐ落とし主が回収するようなものと、子供向けのおもちゃや傘等、保管期限が来るまで回収されないものがあると考えられるため、保管場所に与える影響を加味する必要がありそうです。
(例えば、すぐに回収されるようなスマホだと1日程度しかその場所を占有しませんが、すぐに回収されないようなものの場合、保管期限ギリギリまで保管場所を占有します)
以上のことから、今回は
(A)東京駅の保管可能容量 × (B)忘れ物の保管日数
という計算で東京駅の忘れ物の数を推定します。

(A)東京駅の保管可能容量

 駅には駅員の事務所があります。その中で業務にあたるかたわら、忘れ物の保管、問い合わせ対応をしていることが多いはずです。決してメイン業務ではなく、あくまで顧客への親切で行っているサブ業務でしょうから、その保管スペースは東京駅といえども小規模なはずで、執務スペースの一角に過ぎないと考えるのが自然でしょう(スペースを圧迫するようなら、鉄道各社はもっと忘れ物をしないように乗客に働きかけをするなどの対策を取っていることでしょう)。

忘れ物として想像できるのは、以下のようなものが多いのではないでしょうか。
・傘
・財布
・スマホ
・本
・衣類等(マフラー・アクセサリーなどの小物)
・子供のおもちゃ

①小物(傘以外)
 傘以外の小物類のサイズは、平均的に縦・横・奥行それぞれ10cmだとすると、体積は1,000㎤となります。
保管場所として想定されるのは、事務用のキャビネット1個分程度(幅50cmで5段くらいあるもの)が考えられ、キャビネットの体積を縦・横・奥行それぞれ50cm・50cm・80cmだとすると、体積は200,000㎤となります。ただし、忘れ物のサイズはバラバラで目一杯収納できない場合や、間仕切り等で使えない箇所も存在しているため、そのうち半分が実質的な収納可能容量と考えると、利用可能な体積は100,000㎤となります。
そうすると、キャビネット1つでに保管できる荷物の最大数は、100,000㎤ ÷ 100㎤ = 100個程度ではないかと推測されます。

②傘は傘立てが用意されているでしょうから、別枠で考えます。
 傘は雨の日に集中的に忘れ物が発生すると考えられるため、ある程度余剰を用意していると考えると、一般的な傘立て2個分を用意していると考えます。すると、合計100本分くらいは保管することができるでしょう。

(B)忘れ物の保管日数

①小物
 小物の中でも、すぐに引き取られるであろう財布、スマホは保管期間が短く、一方で本や衣類、おもちゃなどは、忘れ物をした人もあきらめがつきやすく、引き取りに至らないことが多いのではないかと想定されます。
すると、同じ数の忘れ物であっても、引き取りまでの期間によって保管スペースに与える影響は異なります。
財布、スマホは1日で引き取り、本や衣類、おもちゃは引き取りされずに処分されるまで保管されるとします。これを仮に7日間としましょう。財布、スマホの忘れ物と、本、衣類、おもちゃの忘れ物の数の割合は正確には分かりませんが、半々とすると平均約4日の保管となります。
ここの精度はあまり高めようがないので、これで計算を進めます。

②傘
 傘の場合はほとんど引き取られずに廃棄の対象になるでしょうから、保管期間は7日とします。

答え

 小物類は4日で引き取られるわけですから、先ほどの計算した保管容量である100個が4日分の量ということになります。したがって小物の忘れ物は、1日平均25個程度となります。
 傘の忘れ物は、先ほど計算した保管容量である100個を保管期限の7日間で割ると、1日平均は15個となります。
小物と傘を合算すると、25個 + 15個 = 40個/日
となります。
東京駅に発着する電車の本数が、1時間に30~60本ほどあるとすると、6時から24時の間に500~1000本くらいの電車が発着していることになります。
そうすると、電車約10~20本につき忘れ物1個という計算となります。もう少し多いような気もしますが、極端に違うこともない水準と言えます。

 最後に、この解法の問題は、対象が東京駅でない場合、どれくらいのスペースで保管しているかが想像しにくく、東京駅というある程度保管スペースを確保できる駅だからこそ使える解法ということに注意が必要です。

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