《フェルミ推定》日本にある車の数は?

乗用車の数 フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。
車の数といっても、工場で製造中の車両や、中古車屋で展示している車両も含めるのかによって変わりそうですが、本問では日本で走っている(=車検証が発行されている)乗用車の数を推計します。
実際の面接でも、前提をしっかりと伝えてから推計に入りましょう。

アプローチ

 一番最初に思いつくアプローチは、年代別・地域別にどれくらいの人が車を所有しているか?というセグメント別に考え積み上げるというアプローチです。
個人だけでなく法人が保有していることもありますが、街で走っているトラックやタクシー等の社用車と自家用車の比率を推計し、社用車は自家用車の●●倍として計算することも可能そうです。
多くのライバルたちは上記のような積み上げ式で回答すると考えらえますが、面白味がないため本問では別のアプローチをします。
例えば、前書きで記載していたように”車検証がどれくらい発行されているか?”という観点で推計するのも面白そうですが、車検についての勘所がないため、今回はマクロ的なアプローチで計算をしてみようと思います。
(問われている数値を別の観点から推計する方法は、日本に医者(歯科医含まず)は何人いるか?)をご覧ください。

 マクロ的なアプローチの計算方法ですが、まず(A)国産自動車メーカー大手3社(トヨタ・日産・HONDA)の売上高から(B)世界に占める日本の売上高比率を推計して日本の売上高を算出します。
次に、3社の日本におけるシェアから(C)国内自動車市場全体の売上高を割り戻し、(D)車1台あたりの単価から大手3社の国内年間販売台数を算出します。
こちらの年間販売台数は、自動車メーカーの売上高から計算しているため、タクシーや社用車等の法人所有の車も含まれます。最後に、(E)上記で年間販売台数を求めることができましたが、フローをストックに変換する必要があります。

計算式で表すと、
(A)大手三社の売上高 × (B)大手三社の日本市場の割合 ÷ (C)大手三社のシェア ÷ (D)車の単価 × (E)車の平均耐用年数


となります。

(A)大手三社の売上高

 自動車業界について勘所のある方なら、トヨタの売上高が30兆、HONDAがその半分の15兆、日産が10兆程度で大手三社の売上高の合計が55兆円程度であるということは知っているかもしれません。
大手三社のそれぞれの売上高が分からなかった場合でも、トヨタの売上高約30兆円は昨年多くの記事に取り上げられており、多くの方が知っているのではないかと思います。
街中でトヨタ車を見る回数とHONDA・日産車の合計を見る回数が同じくらいだから、トヨタ30兆円+HONDA・日産計30兆円で合計約60兆円?という計算をしても良いです。
トヨタの売上高について勘所がない場合、トヨタの日本における企業としての立ち位置を考えると良いでしょう。
 トヨタは群を抜いて日本で一番の売上高を誇る企業ですが、その他の有力企業であるメーカー(日立・SONY等)の売上高が10兆円ということさえ分かれば、20兆~30兆円程度ということが分かるのではないでしょうか。

(B)日本の売上高比率

 自動車メーカーの世界の売上高に占める日本の売上高比率を知っていれば問題ないですが、おそらくほとんどの方は知らないでしょうから、こちらも推計する必要があります。
推計の方法ですが、適切な販売ポートフォリオとは何か?ということを軸に考えます。

 海外で売れると当然売上高は上がりますが、為替の急激な変動によって利益がマイナスになることがありえます。
そのため、リスクを分散させるため主要マーケットであるヨーロッパ・アメリカ・日本円・中国元の4通貨でバランスよく販売しているということが考えられます。

 具体的にどのようなバランスかは、大手三社でも会社によって異なりそうで、推計が難しいため、仮置きではありますが、1:1:1:1で配分していると考えましょう。すると、日本の売上高比率は25%ということになります。
こちらの仮置きは少し乱暴ではありますが、最後まで計算をして妥当性を検証したいと思います。

(C)大手三社のシェア

 車のメーカーはほとんどの方が聞いたことがある会社ばかりです。
大手三社のトヨタ・日産・HONDAのほか、国内だとSUBARU・三菱自動車・SUZUKI・DAIHATSU、海外だとベンツ・BMW・Audi・ポルシェ・ジャガー・Jeep等があります。
こちらに挙げ切れていないものもありますが、合計するとだいたい15社程度でほぼ100%の市場を形成していると考えて良いでしょう。
大手三社のシェアですが、パレートの法則を用いて、8割のシェアは2割(3社)のメーカーで占めていると考えても良さそうですので、大手三社のシェアは8割とします。

(D)車の単価

 車といっても100万円台のものから数百万円だいのものまであり、価格はピンキリです。ここでは、販売台数の多い車の価格をベースに、他の車とのバランスを見て調整します。
では販売台数の多い車ということですが、どのような車が人気でしょうか?
最近ではトヨタのヤリスが人気です。AQUAもいまだかなり売れているでしょう。
いずれにせよ、コンパクトカーが売れ筋だということは分かるかと思います。

 さて、ではそれらのコンパクトカーの販売単価を考えていきます。
ここでいう販売単価とは、自動車メーカーの売上高ですので、ディーラーの売上高(私たちが購入する価格)とは異なることに注意が必要です。ディーラーでの車体価格×0.8ぐらいが自動車メーカーの売上高として適正でしょう。
新車で購入するときは、車体価格に加えて車検費用や税金、整備手数料が取られて上乗せされてますが、ディーラーでのコンパクトカーの車体価格はだいたい150万~200万円程度です。
そのため、自動車メーカーのコンパクトカー1台あたりの売上高は120万~160万程度でしょう。

 ただし、これらは販売台数が多いとはいえ、比較的安いコンパクトカーの話です。
クラウンやアルファードなど数百万円する車もあり、昨今のSUV人気で比較的高価なハリアーやCR-V等も売れていると考えたら、自動車メーカー売上高の平均単価を250万円とします。

 もしトヨタの売上高・販売台数について知見のある方でしたら、ざっくりとした計算ですが
売上高(30兆円) ÷ 販売台数(1,000万台) = 300万円 / 台
と考えても良いです。

(E)車の耐用年数

 本問での問いは、”新車で何台売れているか?”ではなく”日本にどれだけの日本車があるか?”ですので、解くべきは”購入してから売るまで何年乗るか?”ではなく、”車の寿命はどれくらいか?”ということです。
日本車で重要な部品が壊れはじめるのが10年くらいと言われているため、平均的に15年くらいは車は持つでしょう。
しかし、古くなったものは海外に売られたり、あるいは事故で廃車する場合もあるため、日本内における耐用年数は、10年とします。
実際に中古車を見ているとで2010年台前半の車も見る、そこから数年乗ると考えてあまり違和感はないと思います。

答え

60兆円 × 1/4 ÷ 80% ÷ 250万円 × 10年 = 7,500万台

 以上が、日本の車の台数ということになります。
日本の世帯数は4,500万程度なので、一家に一台、プラス社用車(営業車・タクシー等含む)3,000万台と考えるとあまりズレていないような気がします。

 日本の売上高比率を推計する際に、日本:アメリカ:ヨーロッパ:中国=1:1:1:1として日本の売上高比率を25%としましたが、この数値はあまり外れていなかったと言えるでしょう。

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