《フェルミ推定》アメリカの防弾チョッキの市場規模は?

フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。
大抵の人は見た事すらないような商品で、想像するのが難しい問題ですが、こういう場合は丁寧に論理を積上げていく事が大切です。
まずどのような人たちが使うものなのか、セグメンテーションを考え、それぞれについて他の産業や他のマーケットとの比較を手がかりに推計します。

アプローチ

アメリカでの1年間の防弾チョッキの販売金額を推計する問題です。”市場規模”とのみ問われれば、一般的には年間、金額ベースととらえるのが普通でしょう。
防弾チョッキを持つのは、軍や警察などの職業についている人が仕事で持つ場合と、趣味や自衛のために個人で保有する場合に分かれます。
そこで、民間需要と軍・警察の需要に分けて考え、それぞれのセグメントにおいて、次のアプローチで算出します。
(A)人口 × (B)保有率 ÷ (C)耐用年数 × (D)単価

(A)人口

  • 軍/警察
    アメリカでどれくらいの人がこの職業についているでしょうか? 徴兵制があり、世界に展開する軍を持っていますので、日本の自衛隊と比較すると、総人口当たりの就業割合は高いはずです。
    いきなり米軍を考えるよりも、自衛隊との比較で考える方が手がかりがつかみやすいので、自衛隊とのアナロジーで考える事にします。
    自衛隊は日本各地に駐屯地があります。例えば東京では市ヶ谷、福生、練馬など簡単に3つくらいは思い浮かびます。知らないものも含めると、実際には5~10くらいはありそうです。
    ただ、自衛隊が所在していない都道府県もあるでしょうから、少ない方の数字をとって各都道府県に平均5拠点と仮定してみましょう。さらに、各拠点1,000人程度の自衛官がいるとすると、合計の人数は、
    5拠点 × 50都道府県(計算を簡素化させるため概数に変更) × 1,000人 = 約25万人
    これは日本の人口の約0.2%にあたります。

    一方アメリカの軍には、人口の0.2%よりも高い比率で就業している人がいるでしょう。
    ただ、自衛隊が国内を中心に活動しているのに対して、米軍が自国内と中東その他の紛争地域などにも展開していることを考えたとしても、さすがに10倍もの差があるとは考えにくいです。
    仮置きにすぎませんが、5倍として計算を進めたいと思います。
    0.2% × 5倍 × 3億人 = 300万人

    さて、続いて警察です。
    日本の場合に警察署はどのくらいあるのでしょうか。だいたい1つの市・区に1つぐらいだと思います。
    東京だと23区+10市程度でしょうから、33拠点ほどあるのではないかと仮定します。地方の場合、東京に比べ人口は少ないため、もう少し少ないでしょうが、インフラのため劇的に数が変わることはないでしょう。
    そこで、各都道府県に25個拠点があると仮定します。
    私が最近行った警察署の規模を考えると、だいたい3~4階建てのビルで各フロア50人程度だったかと思います。そこで、1つの拠点に約200名の警察官が勤務していると考えられます。
    25拠点 × 50都道府県 × 200人 = 25万人
    となり、人口の0.2%に当たります。
    アメリカもこの比率はさほど変わらないと考えると、3億人に対して60万人が警察の人数となります。

    軍:240万人
    警察:60万人
    合計:300万人
  • 民間
    一方、民間の需要を考える際の母集団は、人口3億人全体が対象となります。

(B)保有率

  • 軍・警察
    さて、先ほど算出した軍や警察の職に就いている人のうち、どれくらいが防弾チョッキを保有しているのでしょうか?
    事務職の人は保有していないと考えていいでしょうから、7割程度が使うものとしましょう。ただ、全員が同時に使うわけではないでしょうから、保有しているのはその半分の35%とします。
    300万人 × 35% = 105万着
  • 民間
    一方の民間はどうでしょうか?イメージでは、自衛のために銃と防弾チョッキを備えているという家庭がありそうですが、そんな物騒な社会は異常ですよね?多くの家庭が実際そうしているとは考えにくいです。
    おそらく都会ではそういった自衛よりも、セキュリティシステムなどによって自衛する方が合理的でしょうから、 考える対象は、そういった設備が導入できない地方都市です。
    しかも、銃を備える伝統のある地域であったとしても、 銃は備えていても防弾チョッキまであるというのはかなりの備えですから、極めて少数と考えるべきでしょう。
    銃を備えるのがそう珍しくない地方のうち、5%程度の世帯において保有されていると考えてみます。
    そういった地方都市の人口を、全体の人口の1割と仮定します。また、世帯全員分があるのではなく、各世帯に1着あるとすると、それらの地域の平均世帯人数を4人とすれば、
    3億人 × 10% ÷ 4人 × 5% = 38万着
    1,000人に1着持っているという感覚ですから、そう悪くないかもしれません。

    軍・警察を合わせると、
    105万着 + 38万着 = 143着

(C)耐用年数

  • 【共通】
    毎年買い換えるわけではないので、耐用年数で割る必要があります。あまり交換が必要ないように作られているでしょうから、洋服よりも長めに考えて5年とすると、

    143万着 ÷ 5年 = 29万着/年

(D)単価

  • 【共通】
    防弾チョッキの単価ですが、どれくらいが相場なのでしょうか。
    軍用・民間用でも大きく異なりそうですが、予測すること自体が困難であるため、平均で考えることにします。
    おそらく一般衣料と異なり特殊な繊維や素材を使っているでしょうから、数千円ということはないでしょう。
    ただ、衝撃に耐えうるという意味ではバイク用プロテクターの上位互換と考えればよいかもしれません。
    バイク用は2~3万円程度で売っていますので、その倍くらいと考えて5万円を平均価格としたいと思います。

結果

以上の結果から、
29万着/年 × 5万円 = 145億円
という市場規模になります。
かなり大きめに感じますが、人口が2.5分の1の日本に換算すると、50億円という市場になります。さらに、日本では軍人の数を1/4にしないといけないですから、さらに市場規模は小さくなります。
単価が高いことを考えると妥当といえるのではないでしょうか。

答え:145億円

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