《フェルミ推定》日本で一日に稼動している警備員の数は?

フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。本問では、フェルミ推定でよく使われる積み上げ式(以前の記事:日本に占い師は何人いるか?を参照)の推定ではなく、マクロな視点で、かつ独特の方法を用いて計算しています。

ヒント

警備のタイプごとに市場を推計していくと、非常にマニアックな警備市場を数多く推計しないといけなくなります。それを避けるためには、全体像からのアプローチを考えたほうが得策です。

全体像といってもセコムとALSOKくらいしか知らない人が多いでしょうから、その2社が市場のどれ位を占めているのか考えてみましょう。

アプローチ

ビルや現金輸送など、様々な場に警備員が配置されています。では一体日本全国では何人いるか?という問題です。
警備が必要な場の数 × 警備員数
というのが最もシンプルなアプローチですが、警備の場合分けをしていくと、なじみの薄い場面が多すぎて、非常に難しくなります。
ホームセキュリティであればまだ想像はつきますが、ビルの警備、現金輸送の警備、要人の警備となっていくと、難易度が高いです。
そこで、あえてセグメントせずに全体をおおざっぱに推計するアプローチをとります。

今回は、(A)警備業界の売上 × (B)原価率 ÷ (C)警備員のコストというアプローチで推計してみます。

(A)警備業界の売上

警備業界の売上を推計する手がかりは非常に乏しいのですが、まずこの業界が上位寡占の業界なのか、それとも分散している業界なのかを考えてみましょう。
警備で有名な会社といえば、セコムとALSOK(綜合警備保障)の2社でしょう。他にもテレビCMを見かける会社がありますが、この2社の知名度がダントツです。では、それ以外の会社はどれくらいあるのか?を推計するにあたり、
”他に会社があるが有名でないのか、それとも会社数が少ないのか?”
を考えてみましょう。これは間違いなく前者です。なぜなら、システム構築が必要なホームセキュリティは別ですが、工事現場の警備やビル警備などは人が揃えば、高度な技術が要らないビジネスだからです。したがってこの業界は分散市場のはずです。
ならば、セコムとALSOKという大手2社でも市場占有率は低いでしょう。比較として寡占業界である携帯電話業界を考えると、docomo、au、Softbankで市場の7割~8割のシェアを持ち合わせているとすると、1社あたり2~3割程度になり、2社で5割程度です。
前述のように警備は人さえ集まれば簡単に成立するビジネスである分散市場であるため、2社のシェアを2.5割(寡占市場の半分)、すなわち、セコムとALSOKの売上の合計の約4倍が業界の売上に相当すると推計できそうです。

では、この2社の売上はどれくらいでしょうか?
この2社は上場企業の中でも知名度の高い部類に入ります。売上でもそれなりの規模があると考えて良いでしょう。
ただ、それなりの規模と言ってもどれくらいの規模かイメージがつくでしょうか?数百億?数千億?それとも数兆?
ビジネスモデルが類似する業界で売上規模のイメージの沸く企業をいくつかピックアップして推測するという方法も有効ですが、ここは少し独特のアプローチをしてみたいと思います。
セコム・ALSOKと言えばテレビCMで見る機会やサッカーや野球等のスポーツ中継で目にする機会が多く、スポンサーとしての地位を確立しているといえます。
そのため、”代表的なスポンサーの売上高は、どれくらいなのか?”ということを基に推定していきます。

まず代表的なスポンサーとして思い浮かぶのは、トヨタや東芝、Panasonic等が挙げられます。
トヨタの売上高は約30兆円というのは有名ですし、東芝やPanasonicも数兆円の規模ということは容易に想像できるかと思います。
つまり、スポンサーの代表格になるには、数兆円の規模の売上高が必要ということになります。
セコム・ALSOKは、ともにCMはよく見ますし、スポンサーの代表企業とまでは言えないものの、ある程度の規模はありそうです。
ただし、冠スポンサーであるトヨタや東芝、Panasonic等と比べると露出は抑えられているため、少し抑えめにして1兆円程度の規模と推定します。
以上から、業界1位のセコムを1兆円、2位のALSOKはその半分の規模として5,000億円程度とおきます。
先ほど、業界1位・2位の4倍が業界全体の売上高と考えていたので、トータルで1.5兆円 × 4 = 6兆円が業界の売上高に相当します。
ただし、これは1年間の売上高ですので、1年間で割ると
6兆円 ÷ 365日 = 164億円/日
以上が、警備業界の1日の売上高と推定されます。

この計算はかなり大まかな計算となっておりますが、フェルミ推定では大幅に桁を間違えなければ問題ありません。

(B)原価率

続いて、原価率についてです。
一般的なマージン体系として、卸6割 → 小売り8割 → 消費者10割といったものがありますので、
だいたい20%程度の利益を原価に上乗せしているといえるでしょう。
そのため、原価率は80%として設定します。
(正確には原価100である場合の売値は120であるため、原価率は 100(原価) ÷ 120(売値) = 83.3%ですが、計算が難しくなるため数字を丸めています)

(C)警備員のコスト

最後に、警備員の1日当たりのコストです。これはどれくらいでしょうか?
給与としてもらっている額を1.2万円/日とすると、保険料などのその他の人件費を加味して、1.8-2.4万円程度が、会社にとってのコストということになります。間をとってキリのいい2万円を取って計算してみます。

結果

(A)警備業界の売上 × (B)原価率 ÷ (C)警備員のコスト で稼働している警備員の数を算出するため、

(A)164億円 × (B)0.8 ÷ (B)2万人 = 65.6万人

以上が、日本中で1日に稼働している警備員の数ということになります。

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