ショーンK事件から見えたもの

sean-k 業界情報

経営コンサルタントを名乗るショーンKは、学歴詐称や、実体のないコンサルティング実績で、テレビのコメンテーターを努める等、文化人としての地位を獲得していました。コンサルティングという仕事に関して大きい示唆があったこの出来事を、5年という節目を機に振り返ります。

偽りのコンサルタント

 ショーンKとは、テレビのコメンテーターやラジオパーソナリティとして活躍していた、自称コンサルタントの人物です。
「『自分力』を鍛える」という書籍を出版しており、その本の経歴としては、次のように記載されています。

ショーン・マクアードル川上。ブラッドストーン・マネジメント・イニシアティブ・リミテッド代表取締役、マネジングパートナー。大手コンサルティング・ファーム、投信投資顧問会社を経て、95年に経営コンサルタントとして独立。専門はコーポレート・ディベロップメント(全社戦略開発)、新規事業開発支援。現在、ニューヨーク、パリ、東京など6カ国7都市を拠点に、日系、外資系企業のさまざまな事業領域における戦略コンサルティング業務、投資ファンド運営事業、地方自治体、各国政府・行政団体へのアドバイザリー・サービスに従事。そのほか、ベンチャー育成・創業支援、ビジネス・リーダーのためのスキル開発トレーニングも行う。また経済・ビジネス番組を中心にテレビ、ラジオのパーソナリティ、コメンテーター、パネラーとしても活動。現在、FMラジオ局J‐WAVE(81.3FM)『大和証券MAKE IT 21』(毎週土曜22時~)のナビゲーターを務めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 

Amazon 「自分力」を鍛える 著:ショーンK より引用

 数々の有名番組にコンサルタントとして出演し活躍していましたが、2016年にいわゆる「文春砲」で、経歴が虚偽である疑いについて報じられました。これをきっかけに本人が経歴の虚偽を認めて謝罪することになり、コメンテーターやパーソナリティーとしての仕事を全て降板することになりました。驚くべきは、この虚偽が多岐にわたり、何もかも嘘であったことです。

あまりの「それっぽさ」

 ここまで嘘で固められていたのに、同業である我々コンサルタントですら、見抜けなかったのはなぜなのか。
実は、当時から「いったいどんなコンサルティングをしているのだろう?」と疑問を持ったことはありました。私以外にも、いぶかしく思う人はいたのではないかと思います。コンペで出会うこともなければ、ショーンKの会社に勤めるコンサルタントに出会ったこともない。採用をしている様子もない。いわゆるコンサルティング業界で、オープンな競争の中でビジネスをやっているようには思えませんでした。
 ただ、事業の実態がないとまでは思いませんでした。そもそもコンサルティングの世界はクライアント名を明かしませんし、ショーンKのような有名人なら、可愛がってくれる大口のクライアントを持ち、顧問業のようなことをやっているのかな、くらいに思っていたのです。コンサルタントであることを疑わなかったのは、あまりにそれっぽく見えたからです。高そうなスーツに身を包み、経営ワードを使いこなし、あらゆるテーマに対して切り返しができる、まさに我々が目指すコンサルタント像に近かったのです。
 日頃ファクトを積み上げて経営判断をサポートをしている我々も、ファクトよりも雰囲気で物事を判断してしまうということを思い知らされました。

コンサルタント=虚業という悪評

 このニュースは週刊誌で連日報道されました。もともと鼻持ちならない存在と思われていたのか、コンサルタントという仕事に対して、虚業であるというような悪評が立ちました。コンサルタントの仕事をよく知らない人たちからは、ショーンKみたいに口先だけで商売する軽薄なやつら、という見方をされた人もいたに違いありません。
 一方で、ビジネス上の影響はほとんどありませんでした。クライアントの皆さんは、おかしな悪評に左右されない賢明な考えを持っていました。ショーンKのニュースなどでは右往左往しないような、厚い信頼関係を築いてきたことも、功を奏したといえます。

実はコンサル会社でも重視されるルックスや雰囲気

 ただ、コンサルタントにとってイメージが重要であることを浮き彫りにしたニュースでもありました。
実際、コンサルタントの評価上も、頭のよさやプロジェクト実績だけですべてを評価するわけではありません。多分にイメージを加味して評価を付けます。
 例えば、クライアントに可愛がられる雰囲気を持っていたり、保守本流というようなルックスをしていると、ほかの人が話すよりも話が通りやすいというような、プロジェクトを円滑に進める役割を担うことができます。こうしたコンサルタントは実力に加えて評価が高くなり、こうした人が将来のパートナー候補となっていきます。
 以前であれば、若い女性をチームにアサインすることで、クライアントのおじさんを”転がす”というようなことを臆面なくやるファームもありました。クライアントのハートをつかむために、イメージが重要であることは、コンサルタントをやるうえで見落としてはならないポイントです。

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