《退職者インタビュー》デロイトトーマツコンサルティングでの仕事の実際

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コンサルティング業界でいわずと知れたBig4の一角を担う、デロイトトーマツコンサルティング退職者へのインタビュー記事です。組織文化や給与、さらには元社長である近藤氏のEY移籍に関するデロイト内部からの見え方についても触れていますので、是非最後までご覧ください。

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岩村拓海(仮名):30代男性。2015〜2021年在籍。最終ポジションはマネージャー。

小さなファームの寄り合い所帯、配属後の異動は至難の業

-デロイトトーマツコンサルティング(以下DTC)はどんな会社ですか?
岩村:私が在籍していたDTCは、Big4という4大会計事務所グループの1つである、デロイトトーマツグループの一員です。監査法人やファイナンシャルアドバイザリーなど、サービスごとに会社が分かれており、その中でコンサルティングを事業としている会社がDTCです。
Big4の1つというだけあって、日本でのビジネス規模も大きく、3,000人以上の社員を抱え、日本の大企業を数多くクライアントとしています。


-コンサルティングのチームはどのような編成になっていますか?
岩村: 他の総合ファームと同じように、サービスラインと業界の2軸で分けられています。デロイトではコンピテンシーとインダストリーと呼びます。コンピテンシーにはサプライチェーンや人事系などがあります、インダストリーでは自動車が強く、大きなチームを抱えています。

入社してすぐは「プール」と呼ばれるテーマ・業界の仕切りのない組織に所属するのですが、プロジェクト経験を積んでいくと、徐々にチームに配属されていくことになります。
一度配属されると、基本は同じチームでずっと仕事をし続けていくことになります。専門性が身に付くという意味では良いのですが、希望しない配属になったり、いろいろなプロジェクトを経験したいコンサルタントにとっては、異動がないということが仕事の満足度を大きく下げていると思います。

決して異動を制限しているわけではないと思うのですが、組織が”タコつぼ化”しているために事実上レアケースになっています。例えば、自動車のチームに配属されたけど、金融のチームに移りたいと思ったら、金融のチームで面倒を見てくれる人を探し、元の自動車のチームにも根回しをしなければなりません。普段から同じチーム内でしかほとんど交流がないため、かなり難易度は高いということになります。

デロイトは規模は大きいですが、小さな専門ファームの寄り合い所帯のような組織になっていると言っていいと思います。

学びは多いが、大量採用による質の低下が目につくように

-デロイトでのキャリアはどのように評価されていますか?
岩村: デロイトでの学びは多かったと思います。配属されると小さなチームでずっと仕事をするわけですが、どのチームにも目標とするような優秀な先輩社員がいるようです。私のチームにももちろんいました。

それに、デロイトでの経歴はプラスに働きます。私も転職する際に、様々な選択肢がありました。戦略ファームや、事業会社でも管理職ポジションでのオポチュニティがあったのは、デロイトという看板があってこそだと思っています。

研修なども非常に充実していましたね。新卒で入社すると、2か月くらいのしっかりとした研修で学ぶことができます。エクセルやパワーポイントといった基本的なスキルから、実戦を想定したケース演習まであります。先輩社員がしっかり時間を使って教えてくれる体制になっていて、この場での学びは非常に大きかったです。他のファームと比べても体系的に整備されている印象です。

ですが、最近では採用人数が大幅に増えたことで、デロイトに限らず総合ファーム出身者という経歴の価値が低下しているという話も聞きます。私が入社したころはせいぜい新卒採用は50名程度でしたが、今は100人以上採用していると聞きます。当然採用のバーは下がっていて、能力的に”これはマズい”と思うような若手もチラホラいますね。

総合ファームの中では”コスパ”が悪いデロイト

-給与体系はどのようになっていたのですか?
岩村: 基本的には他の総合ファームと横並びです。ボーナス込みの年収を下の職位から並べると、
ビジネスアナリスト 600万円
コンサルタント 700万円
シニアコンサルタント 1,000万円
マネージャー 1,300万円
シニアマネージャー以上は噂レベルでしか知りませんが、パートナーまで行くと、業績が良ければ3,000万円が見えてくると聞いています。

でも、実はデロイトはコスパが悪いと言われています。
長時間労働が常態化している一方で、残業代が出にくいからです。
そもそもみなし残業時間が非常に多く、年収にすでに残業代が含まれているうえに、みなしを超える残業時間をつけにくい雰囲気があります。時間当たりの給与にすると、かなり悪いのではないかというのが、若手社員の共通認識です。ビッグ4の他社どころか、アクセンチュアよりもよっぽどコスパが悪いのではないかと思っています。

-労働時間の削減は進んでいないのですか?
岩村: 全社的にはワークライフバランスの改善が言われていますが、実際の労働時間はチームごとの方針に大きく左右されるため、全社一律で改善されているわけではありません。それに、DTCのコンサルティングは、長時間労働で付加価値を出している面があると思っています。何でもやります、何時間でもやります、というような高級派遣に近いやり方なので、そう簡単に労働時間は減らないのではないでしょうか。

もっと言うと、パワハラ文化がまだ残っている会社です。隣のチームから怒鳴り声が聞こえてきたりすることもよくあります。若手社員が病んで無断で会議を欠席するようなこともあります。こんな時は、上司が社員の自宅まで安否確認に行くらしく、いつの時代の話だ?とあきれてしまいます。

結果責任をあいまいにする”ダブルカウント評価”

-かなり厳しい社風なのですか?
岩村: コンサル業界特有のUp or Outの名残はありますが、かなりゆるくなってきています。
デロイトの場合、特にマネージャー以上に不思議な評価制度が適用されていて、これがぬるま湯文化を作る原因になっていると思っています。
”ダブルカウント評価”とでも言ったらいいでしょうか。
通常売上責任を負っているパートナーは、自分の目標達成のために自分のチームを使って実績の獲得に励みます。ただ、2人のパートナーが共同で提案するということもあります。例えばリレーションを持っているパートナーと、提案内容に関する専門性を持っているパートナーが一緒に提案するというケースです。

この場合、常識的には2人のパートナーの貢献割合に応じて実績を按分すると思うのですが、デロイトの場合は2人に100%の実績がつきます。一部の総合ファームでも似たような制度になっているようですが、これは非常に欠陥のある制度だと思います。

例えば2,000万円の案件が取れそうな場合、もちろん1人で2,000万円の実績を獲得することもできますが、共同提案ということにすると、2人に2,000万円の実績がつくのです。ということは、仲のいい人が多いパートナーは、自分で実績をあげなくても、「頼むよ、共同提案にしてくれない?」とお願いをすることで、簡単に実績をあげることができるようになります。この制度は仲良しグループからはみ出さない人が昇進する仕組みで、結果主義とはほど遠い組織を作っています。

マネージャーの場合は、チャージ金額でこの制度が適用されています。年度末にほかのチームのマネージャーが、実績をつけさせてくれないかと頼み込んでいる姿を何度か見かけたことがあります。正直言って、この組織大丈夫かな、と思いました。

確かに、他のファームでは、共同提案の場合の実績の按分割合をどうするかで、かなりもめるケースがあると聞きます。それを避けるための知恵なのかもしれませんが、マイナス面があまりに大きく、組織をだめにしていると思っています。

上が新陳代謝しない、重たい組織

-すると、デロイトの上層部は、あまり新陳代謝がないのでしょうか?

岩村: ないですね。どんどん上位職が増えていて、組織がいびつになってきています。
若手はそれなりに早いペースで昇進できます。ビジネスアナリストから1-2年でコンサルタント、3年くらいでシニアコンサルタントとなり、そのあとは人によってペースは異なりますが、マネージャー、シニアマネージャ、ディレクター、パートナーとなります。

パートナーは本来エクイティを持つのですが、エクイティを持つパートナーが増えすぎて、最近はノンエクイティパートナーという職位が設けられているそうです。それってパートナー?と思いますね。特に人柄だけで生き残っている無能な上位職に居座られてしまうと、若手のモチベーションはどんどん下がってしまいます。

くすぶっていた組織の問題が、トップの覇権争いをきっかけに100人以上の人材流出に

デロイトでは最近大量退職がありましたが?

岩村: やはりそこ聞きますよね(笑)。
デロイトからの大量退職は、EYに移籍した近藤氏の責任のように言う人もいますが、起こるべくして起こったという印象です。これまでお話ししたような、コスパの悪い労働環境や、組織のいびつな構造などで、もともと不満のマグマはたまっていたんです。

それでも組織としてまとまっていたのは、デロイトというブランドが防波堤となっていたのだと思います。しかし、近藤氏がEYに移る騒動を機に、不満が一気に噴出し、大量人材流出という形で現れました。

お話ししたように、デロイトはタコつぼ組織ですから、ほかのチームがどうなったか全て知っているわけではありませんが、チーム丸ごとEYに移籍というケースが複数あったようです。合計100人以上移っているのではないでしょうか。人によっては給与にひかれてベイカレントに転職したという人も一定数いたようです。

近藤氏はDTCだけでなく、デロイトグループ全体でもプレゼンスを高めようとしていました。近藤氏は目標達成にストイックな人で、デロイトのぬるま湯組織の中で実力主義を徹底しようと、一石を投じる言動をしていたため、仲良しグループでやろうとしていたグループのトップ層から煙たがられ、いられなくなってしまったのではないかと言われています。

デロイトの看板がありますし、最近のコンサル需要を考えれば、近藤氏とその周辺が抜けたところで経営が傾くようなことはないと思いますが、訴訟をしていることも含めて、イメージダウンにはなっているでしょうね。

-貴重なお話ありがとうございました

岩村: ちょっと余計なことまで話してしまいました(笑)。ありがとうございました。

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