《退職者インタビュー》野村総研の仕事の実際

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野村総合研究所(以下NRI)退職者へのインタビュー記事です。NRIといえば、給与が高く東大生の人気就職先として有名です。この記事では、NRIの成り立ちや給与のほか、実際にどのような案件が多いのか、といった内容を記載しています。是非最後までご覧ください。

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野原 慎太郎(仮名) 38歳 新卒でNRIに入社、退職時の職位は上級専門職

日本初のシンクタンクとしての矜持

野村総合研究所(NRI)は、どのような会社なのでしょうか?
野原:NRIは、スタンフォード研究所をベンチマークとして、1965年に鎌倉の山奥で設立した会社です。研究所という名前だけあって、当時はシンクタンクとして政策提言を主業としており、研究者気質が強かったと聞きます。設立当時の社員は非常に優秀で、霞が関にもよく出入りしていたようです。
発足当時の親会社は、野村證券でした。景気に大きな影響を与える政策提言の仕事は、グループとして非常に意義があり、相乗効果を生んでいました。
ただ、「この株を売りたいからこういう提言をしろ」といった指示はなく、独立性は担保されていたようです。

– その後、どのようにして現在の業態になったのでしょうか?
野原:その後、会社が大きくなるにつれ、政策提言だけではなく、官公庁の意思決定に使われるような調査案件を受託するようになっていきました。ただ、この領域は他の総研系が参入したことにより、競争が激化したため、民間企業のコンサルティングに参入していきます。そこでは、マッキンゼーやBCGをベンチマークとして、ビジネス展開してきました。
今の業容に近くなったのは、1972年に野村コンピューターシステムとの合併です。これにより、システム開発が売上高の大半を占めるIT系の会社となりました。

他のシンクタンクは眼中にない

– 競合先は、「総合研究所」と名の付くような企業なのでしょうか?
野原:うーん。どこが、というのはあまり意識してないですね。コンサルティング系のセグメントだとコンサルファームだし、IT系のセグメントだとNTTデータとかだと思います。
正直、よく比較に出される三菱総合研究所も、ライバルだとは思っていないです。三菱総合研究所は、三菱グループの恥だとも言われています。笑
最近話題になったコロナ感染者のグラフも、悲惨なことになっていましたね。政府に配慮しすぎた結果かも知れないですが。笑
就職ランキングを見ても、東大生の就活人気ランキングで毎年1位を争っているくらいなので、傍から見てもNRIは突出していると思います。

規模のIT、質のコンサル

– NRIは、どのような案件が多いのでしょうか。
野原:大きく分けて、コンサルティングとITのセグメントに分かれます。セグメントをまたいだ異動はほとんどありません。売上比率でいうと、9割以上はITのセグメントですね。私はコンサルティング畑でしたが、IT系の高いプレゼンスは感じていました。
セグメント内では、業界やテーマで専門領域がカットされています。
先ほどセグメントをまたいだ異動はないといいましたが、例えば金融からメーカーへの異動など、セグメント内で異動することはあり得ます。
案件の内容でいうと、官民が連携してサービス展開をするスキームがあるのですが、その支援が多かったです。リサーチ系の案件だと、専門家へのインタビューをしたり、論文を読み込んでまとめるというものもありました。

コンサルティングフィーはどれくらいなのでしょうか?
野原
:私がコンサルティングの部門にいたときは、月単価が800万くらいでした。ベンチマークとしていたBCGは倍で、三菱総合研究所は半額くらいと聞いているので、ちょうど中間くらいで、狙い目だったのかと思います。

時代の波に押され、高級派遣化

最近は多くのファームでコンサルティング品質の低下がよく聞かれます。NRIはどうでしょうか?
野原:そうですね、NRIも同様だと思います。最近は高級派遣のような業態になりつつあります。その証拠に、昔は専門性が高い人が昇進していったのですが、現在は知識がなくてもメンバーの管理ができれば昇進できます。

その背景には、専門性を高めて行ってもあまり会社にとって儲からないということがあります。例えば、経産省の人より専門性が高くなると、有識者として政治家や行政からお呼びがかかることがあります。その場合、個人としての活動になるため、会社としては何の利益も生みません。専門性を高めていくと逆に収益性を損なうということもあるため、確実な収益を生む専門性を問わないような案件が増えていったようです。
それは官公庁案件も同様で、いわゆる高級派遣プロジェクトに比べると、収益性は見劣りします。したがって、今となっては官公庁案件もほとんどやっていないです。霞が関へのロビー活動もやっていませんね。あ、でも僕の知っている限りだと、補助金の事務局案件はやっていましたね。楽に儲かる仕事に限っては、取りに行っているようです。

若いときの稼ぎは一流だが、天井が低い

NRIは年収ランキングでもよく目にしますが、実際どれくらいなのでしょうか

野原:私は院卒でしたが、住宅手当等を含めると、1年目から600万円ほどはもらっていましたね。年次・職位別にみると、だいたいこんな感じだと思います。
平社員:(4年目)600万円
副主任:(6年目):800万円
主任(8年目):1,000万円
上級専門職:1350万円
上席専門職:1,600万円
主席専門職:2,000万くらい?

主任までは誰でも上がれるので、在籍さえしていれば1,000万円は間違いなく到達します。だいたい30歳前半ぐらいでしょうか。
上席から主席になるのはかなり難関です。ほとんどの人が上席で止まり、そこから昇格できなければ、徐々に給与は下がり、最終的に1,300万くらいまで落ちてしまいます。それでも日本の会社の中じゃ、十分高いですけど。

給与形態は、コンサルティング系とIT系で別テーブルなのでしょうか?
野原:それが、まったく一緒なんですよ。私はコンサルティング系だったので、正直IT系よりも高くしてほしいという思いはありました。ただ、IT系が圧倒的に強い会社なので、仕方がないのかな。
でも、コンサルティング系で退職する人の中には、IT系と同じテーブルなのが気に食わないといって辞める人も多かったですよ。実際、コンサルティング系の人は辞める人も結構いましたが、IT系の人はほとんど辞めないです。

NRIでは、どういった人事評価がされるのでしょうか?
野原:生産貢献と、営業貢献の二軸で評価されます。
生産貢献とは、単価と稼働率で算出されるものです。アサインされた案件の単価が高く、稼働率が高ければ評価は高くなります。
営業貢献とは、獲得した案件への貢献度のことを指します。例えば、自分が提案に関わった1,000万円の案件で貢献度が40%とされると、400万円分の評価がされることになります。

転職市場での評価は案外高くない

先ほどコンサルティング系の人は辞める人も結構いる、とおっしゃっていましたが、転職先はどのようなところでしょうか。
野原:またコンサルをやりたい、という人は、別のコンサルファームに移ることもあります。コンサルはもういいや、という人は、ベンチャー企業に行くことが多いですね。意外と大手企業の経営企画とかのポジションには転職できないんですよね。そもそもコンサルタント系の人間がNRIには少ないので、事業会社では元NRIというブランド力は発揮できていないと思います。

IT系の人は、どのような転職先になるのでしょうか。
野原:IT系は、実質SIerですので、辞める人はITコンサルに行く人が多いですね。ただし、先ほど言ったように、IT系としては異様に給与が高いため、辞める人があまりいません。笑
IT系の競合先といえばNTTデータとかが近いですが、圧倒的にNRIのほうが給与は高いです。やっていることが同じなのに給与がここまで違う主な理由は、当然品質もあるかとは思いますが、クライアントの業界という要因もあります。
NRIのクライアントは金融系が多く、お金を持っているので、フィーが高い。そのため、社員にも高い給与を支払える、というカラクリです。

– 「総合研究所」という名前もあってか、業務内容をよく知りませんでしたが、イメージをつかめました。ありがとうございました。
野原:ありがとうございました。

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