exコンサルタントたち

業界情報

コンサルタントがキャリアとして価値を持つようになってきたのは、コンサルティング業界の先輩たちがビジネス界で様々な実績を上げてきたからにほかなりません。あの人もコンサルタントなの?という顔ぶれをご紹介します。

コンサル黎明期に活躍したコンサルタントのその後

 コンサルティング業界は人材の宝庫と言われます。コンサルティング業界で経験を積んだ後は、企業の経営者として招聘される機会に恵まれることもあり、成功を収めて、いわゆる「プロ経営者」として活躍する人材を輩出しています。最近は、自分で事業を起こす起業家人材も目立つようになってきました。
 日本のコンサルティングの礎を作った大前研一氏、堀紘一氏は自身で創業し、今なお経営者として活躍しています。それ以外にも、ミスミの三枝匡氏、経営共創基盤の冨山和彦氏、元日本マイクロソフトの樋口泰行氏、DeNAの南波智子氏など、数多くの著名な経営者がコンサルティング・キャリアを経験した後に実業で成功を収めています。
 もう少し若い世代でも、多くの卒業生が活躍しています。日本交通でタクシー業界の変革をけん引する川鍋一郎氏、オイシックス・ラ・大地を創業し、農産物の通販をいち早く事業化した高島宏平氏などはマッキンゼー出身者です。
 ライフネット生命を創業した岩瀬大輔氏、パークシャテクノロジーを創業した上野山勝也氏などはボストン・コンサルティング・グループの出身者です。

 コンサルタントの仕事は、クライアント企業の経営課題を解決することを使命としているので、役割が経営を支援する立場から実践立場に替わった場合でも、非常に経験が活かせると言えます。しかしコンサル出身の有名経営者の著書には、コンサルと経営は全く別物だという意見が多く見られます。コンサルタントは経営の疑似体験をしているようでいて、いざ当事者になると全く別の能力が求められるということが指摘されています。その一方、考え抜く姿勢や、より高い視座から物事を考える姿勢などはコンサルタントの経験が生きているといいます。コンサルタント卒業後のキャリアは、身に着けたテクニックで成功が約束されるというわけではなく、コンサルタントとして身につけた考え方や姿勢を使って挑む、新たな戦いといえます。

海外のexコンサルタント

 海外に目を向けると、IBMの再建を果たし、カーライルのトップを務めたルイス・ガースナーや、モルガンスタンレーのジェームス・ゴーマン、グーグルのサンダー・ピチャイといった、有名な経営者たちもコンサルタントの経験者です。特にルイス・ガースナーは、コンサルタントからプロ経営者になるというキャリアの代表的な成功例と言えます。
 ルイス・ガースナーは、マッキンゼーでコンサルタントとして活躍した後、アメリカン・エキスプレスの経営幹部、RJRナビスコのCEO、IBMのCEO、カーライルの会長を歴任しました。特に巨大企業であるIBMの再建は経営の歴史に残る偉業と言えます。メインフレーム事業における垂直統合の事業構造から、水平統合への転換を、官僚組織化していた当時のIBMで実現したというものです。このドラマは「巨象も踊る」という書籍で読むことができます。ガースナーはその後成功に甘んじることなく、カーライルの会長に就任し、プライベートエクイティの世界に身を投じます。
 プライベートエクイティの世界で活躍するexコンサルタントとしては、ミット・ロムニー氏も挙げなくてはならないでしょう。ロムニー氏は、2012年のアメリカ大統領選挙で、オバマ元大統領と争った人物です。ロムニー氏は政界入りする前はボストン・コンサルティング、ベイン&カンパニーでコンサルタントとして活躍し、その後PEファンド ベインキャピタルを共同で設立し、世界有数のファンドに成長させました。

変わり種の卒業生たち

 アメリカではコンサルタントが政治の世界で活躍するケースが数多く見られます。かつてのブーズ・アレン・ハミルトンは米国政府を最大のクライアントとしており、コンサルティングと政治の人材交流があります。CIAの元局員で、NSAの情報収集を告発したことで一躍有名になり、映画にもなったエドワード・スノーデン氏はなんとこのブーズの出身者です。
 日本の政界では、安倍内閣、菅内閣で外務大臣を努めている茂木敏充氏はハーバード留学後にマッキンゼーにコンサルタントとして勤務し、政界入りした数少ない人物です。ハーバード大学では、公共政策を学んだということですので、もともと政治への関心が高く、政界入りが視野に入っていたのかもしれません。
 さらに変わったところでは、グラミー賞を受賞したR&B、ソウルミュージシャンのジョン・レジェンドがいます。ジョン・レジェンドは大学卒業後にボストン・コンサルティングに入社し、コンサルタントとして活躍しながら、音楽活動を続けていました。ジョン・レジェンドはインタビューで同僚が非常に優秀であったとコメントしています。もしかすると、自分がより輝けるフィールドは、音楽だと認識させた職場だったのかもしれません。
 日本のコンサルタントは、引き続きビジネス界で活躍する人が多いですが、これからこうした政界での活躍や、全く別の世界での活躍をする卒業生たちが増えてくるかもしれません。

アラムナイとしての結びつき

 こうした卒業生の活躍は、メディアなどで取り上げられることが多く、人材市場におけるコンサルタントの評価に大きくプラスに働いています。「あんな優秀な人がいた会社なら」という恩恵が、後輩たちのキャリアにまでいい影響を及ぼしています。また、コンサルティング会社にとっても、先輩の活躍は優秀な人材を集めるうえで広告塔になっているため、卒業生をアラムナイと呼び、多くの会社がこのネットワークを大切にしています。
 メールマガジンの配信や、年1回のアラムナイを集めた会合、アラムナイにコンタクトできるプラットフォームなど、ネットワークを強化する取組に、しっかりと投資をしています。

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