《退職者インタビュー》DTFA噂の真相

DTFA 業界情報

DTFA(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー )退職者へのインタビュー記事です。この記事では、少し前に話題になった過酷な労働環境や、”なぜDTFAが給付金案件を獲得したのか?”といった内容について記載しています。是非最後までご覧ください。

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岩田雄志 30歳 中途で他ファームからDTFAに入社、2021年退社

DTFA社員の1/3がアサインされる給付金事務局

少し前になりますが、デロイトの給付金事業の労働環境が極めて悪いと話題になりました。
岩田:私が在籍していたDTFA(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー)は、2020年に政府が行った補助事業の事務局事業を落札し、事務局運営を行っていました。これは電通が中抜きしたことで悪評が立ち、その後釜として、DTFAが名乗りを上げました。
労働環境が悪いという噂が立ったのは、ちょうどそのころにDTFAで過労死と思われる死亡者が出たからです。

岩田: DTFAの給付金事業は、「家賃支援給付金」と「持続化給付金」の2つがあるのですが、それぞれの事業に本部と支部が設けられています。本部に100名、支部には10名×8拠点くらいのスタッフがいて合計180名×2事業ですので計360名程度がアサインされている巨大な事務局を運営しています。DTFAが1,000人強くらいの組織ですから、1/3程度はこの事業で働いているというとんでもない案件です。DTFAはあくまで運営側に徹していて、各支部にいる合計6,000名の派遣社員が申請書のチェックなどの実務を担っています。

岩田:支部のメンバー計80名で派遣社員6,000名の問い合わせ対応をすることになります。問い合わせ対応は、主に派遣社員が申請書をチェックしていてどのように対応すれば分からないことを、指示するというものです。
単純計算すると、支部にアサインされているDTFAの社員1人が50~60名分の問い合わせ対応をする必要がありますので、ひっきりなしに問い合わせを受けるような状態が続きます。

なるほど、それは忙しそうですね。
岩田:実は、これは定時時間の話です。事務局は定時以降ももうひと山あります。主に本部の方針確認や情報共有で時間がかかります。具体的には、支部のDTFA社員でも判断がつかない申請について、どのように対応すれば良いのかという方針を本部に確認したり、他の支部からの共有事項をインプットしたり。他には、給付金自体の情報もアップデートされることがあるので、どこがどう変わったかをインプットすることも時間がかかります。やはり、派遣社員の対応をするからには、正確な情報を説明できるようになるまで理解しないといけないので。

問合せを受ける側の本部もDTFAでやっているのですよね?
岩田:そうです。私は支部にいたので本部のことを詳細に知っているわけではないですが、本部もかなり忙しそうでしたよ。本部が支部から問い合わせを受ける案件は、判断に困るような難しい案件ばかりです。そうなると判断を仰ぐのは委託元の経済産業省や中小企業庁になります。各省庁と直接意見交換をして判断基準を調整していたようです。これはいかにも時間がかかりそうな仕事ですよね。ですから、本部であろうが支部であろうが全員忙しかったと思います。
ただ、いずれも一般的にコンサルタントの仕事としてイメージされているような、日夜脳みそをひねって考え抜いて忙しい、というわけではなく、非常にオペレーショナルな仕事で忙殺されていました。

– あまりコンサルタントらしい仕事ではなく、かつ業務で忙殺されるということであれば、不満を持つ人も多かったのではないでしょうか。
岩田:はい、不満はかなり溜まっていましたね。退職者もかなり多かったです。私が見えている範囲の、給付金関連の支部だけでも、2~3か月に1人くらいのペースで退職者が出ていた感覚です。かくいう私も不満を持って退職した人の一人です。

給付金案件は、金のなる木

給付金案件をDTFAが受注することが少し意外だったのですが、なぜDTFAは給付金案件を獲得できたのでしょうか。
岩田:経緯は知らないのですが、東日本大震災の時に原発関連の給付金事業を受注し、そこでノウハウがたまったようです。それに味をしめて今回のコロナ関連の給付金にも手を出したようですね。

冒頭で、給付金案件は忙しく不満を持っている社員が多いと伺いましたが、DTFAは、なぜそんなに忙しい給付金案件から手を引かないのでしょうか。
岩田手を引かないどころか、拡大していましたよ。笑
給付金案件にアサインされる主なメンバーのタイトルはジュニアアナリストやアナリストが多いのですが、常に人手不足なので、単価200万~300万で次々とアサインすることができます。
つまり、会社にとっては稼働率を簡単に上げることができ、非常に楽に稼げる性質なんですよね。

給付金案件が嫌なら、パートナーと仲良く

儲かるとは言っても、コンサルタントが嫌がる案件だったら、アサインは大変ではないのでしょうか?
岩田:そうですね、アサインにはパートナーがかなり気を使っています。DTFAは、パートナーの個人商店の集まりのようなもので、それぞれのパートナーが部下の人事権を持っています。
各パートナーが自分の部下を派遣するというような形ですので、成長機会が少ない給付金案件は、気に入っているメンバーはサインしません。能力が高く自分に従ってくれるようなメンバーは給付金事業ではなく、通常のDDやPMIの案件に入れて、長期的に育てようとしてくれます。だから、案件を選びたいコンサルタントはパートナーに気に入られることで、給付金案件を回避しようとしています。

残業申請は、「お手本」を参考に書かされる

DTCでは残業は付けにくいと聞きましたが、DTFAも同様でしょうか?
岩田:はい、一緒ですね。制度上は、深夜残業、休日残業については申請すればちゃんとつけることができるはずなのですが、基本的に申請はできないです。


仮に深夜残業や休日残業を申請すると、労務から怒られるといったことでしょうか?
岩田:そうですね。おそらく人事や労務からパートナーへ連絡がいき、パートナーから怒られることになります。
実は私は入社したばかりのころ、暗黙の了解を知らずに100時間を軽く超える残業をつけたことがあるのですが、すぐパートナーから修正依頼がかかりました。
模範となる勤怠があり、それを参照して勤怠申請をするように依頼があり、素直にそれに従いましたね。

上層部がしっかり搾取する給与体系

DTFAの給与は、どれくらいなのでしょうか。
岩田)私はシニアアナリストになったばかりで、ベースが800万くらいでした。
若手のうちはDTFAよりも、同じデロイトグループのDTC(デロイトトーマツコンサルティング)のほうが給与は高いです。私は専門性の高い経験ができるかと思ってコンサルファームから転職したのですが、労働環境・給与ともに正直あまりうまみは感じなかったですね。ただ、噂ではパートナークラスになると、ボーナスだけで1億を超えることもあるらしいです。
つまり、DTFAは上が下を搾取する給与体系、と言えるでしょうね。

成長を求めてDTFAに入社したにも関わらず、補助金関連の案件にアサインされる可能性が高く、かつ給与もDTCの方が良いのだとすると、DTFAからDTCに転職するような方は出てこないのですか?

岩田:私の周りでは聞いたことがないですね。退職する人のほとんどが、デロイトという看板に嫌気がさして辞めているので、少し給与が高いからといってデロイトのコンサルに行きたいという人がいなかったのだと思います。

岩田:給付金案件は儲かるので会社としてありがたいのはわかるのですが、このような案件ばっかり取っていると、組織としてもケイパビリティが無くなって、長い目で見たら会社にとって良くないんじゃないかな、と思ってます。

– なるほど。ありがとうございました。

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