コンサルタントのネットワーク

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コンサルタントには、メーカー等一般企業のサラリーマンに比べて経営者と会って話す機会が多くあり、非常に魅力的なネットワークがあります。この記事では、こうしたネットワークはどのようにして築かれていくのか、ご紹介していきます。

コンサルタントになるとどんなネットワークが手に入るのか?

 結論から言えば、コンサルタントになったからといって、ビジネスエリートのネットワークに仲間入りするわけではなありません。あくまで個人としての実力に見合ったネットワークに属することになります。
したがって、コンサルタントとして成果を出していけば、企業の経営層と会っていただける機会も増えますし、場合によっては相談をしたいと呼んでいただけることもあります。
 当然若手のうちはあまり実績もなく、「あなたに会いたい」と呼んでもらえる機会はないのですが、チームとして呼ばれたり、パートナーにお供するなどして、経営者に直にあって話をする機会に恵まれることがあります。こうした場であっても、若手にも発言が求められますので、経営者に意見をぶつけるという貴重な経験をすることができます。
 日本の大手企業で数万人の社員を抱えているような企業であれば、自社の社長であっても入社式で話を聞いたっきり退職まで二度と会わなかったということもあると聞きます。こうした状況と比べると、コンサルタントは、経営の臨場感を感じられる場に参加できる機会に非常に恵まれているといえるでしょう。
 しかし、それをネットワークにできるかどうかはやはり実力次第、努力次第ということになります。成長、努力の中でコンサルタントがキャリアの中で培っていく、主な3つのネットワークについて説明していきたいと思います。

コンサルタント仲間という戦友

 コンサルティング会社に同期入社して苦労を共にした仲間は、そのあとずっとビジネス上で付き合いが続いていきます。ありふれた表現ですが、やはり”同じ釜の飯を食った”仲間との信頼関係は強いものです。同じプロジェクトで難問に挑んだ仲間や、プロジェクトが別でも、隣で苦労しながら徹夜で仕事をしている姿を見ていると、その人の仕事に傾ける情熱を知ることができます。これがビジネスパーソンとしての信頼関係になっていくのです。
 この信頼関係は、コンサルタントという仕事が、経営の問題解決ということに特化しているから培われやすい面があります。事業会社であれば、部署によって求められるスキルは千差万別であり、ある部署では数字の感度が求められ、もう一方ではプレゼンテーション技術が何より重要というような、部署による期待値の差が存在します。ですので、部が違えば、ほかの人が何と戦い、何で苦労しているのかがわかりにくいものです。
 一方コンサルタントの仕事は、テーマや業界は違えど、大きなくくりではいわゆる問題解決です。コンサルタント同士であれば、出身ファームが異なっていても、大筋ではお互いの苦労話に見当がつき、元コンサルタントとしての仲間意識が生まれるほどです。
 こうした信頼関係は、転職したあとでも非常に大きなサポートになります。事業会社に入って、元コンサルタントがいると非常に心強く感じます。ある程度のレベルで議論ができるという安心感があり、頼りがいのある存在となります。このネットワークは、キャリアの中で大きな価値を持っています。

距離を縮めたクライアント

 プロジェクトを通じて得られる仲間はコンサルタントだけではありません。プロジェクトで侃々諤々の議論をしてきたクライアントのメンバーたちも、プロジェクトが終わればいい仲間になることが多いものです。本来は利害関係が対立する関係ですが、ビジネス上の関係がどこかのタイミングで”個”同士の関係性に変わっていきます。
 クライアントとの関係構築において面白いのは、”個”同士の関係といっても、千差万別ということです。ビジネスパーソンとして信頼していただき、別のプロジェクトにも名指しで呼んでいただけることもありますし、気の合う友達として夜の付き合いや家族の付き合いまで発展することもあります。損得勘定抜きで友達になれる人がいると、コンサルタントという仕事を通じて、人間を知る仕事をしているのだなと、この仕事の面白みや奥深さを感じます。
 実は、プロジェクトで思うような結果を残せず、「もうお前たちには絶対仕事を頼まない」と言ったクライアントでさえ、しばらくして面会を依頼したら会ってくることもあります。もちろんこれはクライアントの度量が大きいがゆえなのですが、残念な結果になったとはいえ必死でより良いものを作ろうとした過程を評価してくれていたからではなかったかと思っています。
 こうしてできた親しいクライアントの皆さんは、不思議と皆出世していきます。会社の重要なプロジェクトメンバーに選ばれている時点で、ある程度優秀な人であるというフィルターもかかっているのでしょうが、面白いように部長になり、役員になり、経営の中枢へと昇っていく人が多くいます。コンサルタントにとって、仲間の出世は嬉しいものですし、さらに将来のお客さんになってくれるという意味でも、大変ありがたいことなのです。

アラムナイネットワーク

 コンサルティング会社にはアラムナイネットワークというものがあります。アラムナイとは卒業生や同窓生という意味で、アラムナイネットワークはすべての年次が一緒になった同窓会のようなものです。特に外資系のコンサルティングファームは、アラムナイネットワークを維持するために豊富な予算をつけている会社が多いです。定期的にメールマガジンを配信したり、アラムナイパーティーを開催したりすることで、会社を離れた後も、コンサルタントとのつながりを維持する活動を行います。(アラムナイについての記事

exコンサルタントたちを参照)
 もちろん、アラムナイネットワークに資源を投下するのには狙いがあります。卒業生はさまざまな領域で活躍しているから、彼らとのネットワークを維持することで、業界でどんな動きがあるかについて情報交換ができるし、場合によっては仕事の依頼が舞い込んでくることもあります。アラムナイネットワークへの依頼や質問には、驚くほど協力的に対応してくれます。この意識は全世界共通だから面白いものです。
 特に最近はコンサルティング会社でも人手が不足しているため、出戻り採用が珍しくなくなってきています。アラムナイネットワークに所属している人たちに声をかければ、コンサルタントとしての能力が分かっている人を一本釣りできるので、非常に効率のいい採用活動になります。アラムナイネットワークは、採用の面でも大きく貢献していると思われます。
 元コンサルタントからすると、古巣から声をかけられるというのは、その気がなかったとしてもうれしいものです。だから多くのアラムナイがネットワークに所属していることを大きな財産だと思っています。

起業家ネットワークは別世界

 最近は、将来起業する夢を持って、ステップとしてコンサルタントを志望する学生が多いと聞きますが、実はコンサルタントと起業家はそれほど相性がいいわけではないと考えています。コンサルティング会社が注目される起業家を輩出していることは確かですが、コンサルタントが起業家に向いているかというと、そうとも言えないでしょう。
 2000年代は、コンサルタント出身の起業家に失敗例が多いということで、元コンサルの起業家がなかなか資金を集められなかった時期もあったようです(現在はそのようなことはなく、経歴にある「コンサル」の文字は、ある程度好意的に評価されるようですが)。
 そうしたこともあってか、コンサルタントと起業家との接点は多くありません。コンサルタントはプロジェクトのお金の出し手となりうる経営者との接点に恵まれるだけで、あらゆる経営者との接点を持てるわけではないのです。この点は、キャリアのミスマッチにならないよう、理解しておいたほうがいいポイントです。

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