《フェルミ推定》日本に医者(歯科医含まず)は何人いるか?

医者イメージ フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。医者の数という比較的身近な例題ですので、様々なアプローチがあります。この記事では、フェルミ推定時によくみられる要素分解と掛け算のアプローチではなく、新規で医者になる人数(フロー)を日本の医者の数(ストック)に変換するアプローチをご紹介します。

アプローチ

日本中の医者の人数をカウントする問題です。
例えば、1人の医師が何人の人口の医療を支えているかというロジックで算出する事もできますし、 地域的な病院の数から算出したりという方法も考えられます。
しかしちょっと視点を変えれば、もっと簡単な方法に気づきます。医師になるという事は、もれなく大学の医学部を卒業しているということです。ということは、毎年の医学部の卒業生の人数を累計すれば、医師の数がわかるということです。
したがって、アプローチとしては
(A)年間の医学部卒業者数×(B)医師免許取得率×(C)医療従事率×(D)医者の平均活動年数
となります。
(C)医療従事率(医師免許を持っていながら研究職等に就いている人を除外した割合)を項目として入れるかどうかは問題の読み取り方次第ですが、通常医者の人数を聞くとすれば、資格保有者よりは、職業としての医者の数を聞く事が多いでしょうから、医療に従事していない医師免許保有者を除く意味でこの項目を入れて考えます。

(A)年間の医学部卒業生数

・医学部の数
まず、医学部の卒業生数を推計しますが、日本に医学部はどれくらいあるでしょうか?
国公立大学でいえば、各都道府県に医学部を持つ大学が1つ、2つはあります。東京にたくさんあるわけではなく、東大、東京医科歯科大くらいのものですから、人口に比例して医学部の数が増えるわけではなく、地域差はあまり大きくなさそうです。
とはいえ、人口の少ない都道府県に2つあっても過剰になるので、7大都市(東名阪、札仙広福)に2校、それ以外の都道府県に1校と考えて、計54校として考えます。

またそれ以外には、私立大学の医学部がありますが、慶応大学や順天堂大学などがそれにあたります。
私立大学の場合は、組織として利益に対する姿勢が公的な大学よりも厳しいはずですから、人気が高いと入っても、多額の設備投資を必要とする医学部の設置は、経営者の身になってみるとハードルが高いと想像されます。
したがって、有名医学部を持つ私立大学の存在感は大きいですが、それ以外にたくさんの医学部を持つ私立大学があるかというと、 それは考えにくいという事になります。

有名な私立大学をいくつか思い浮かべてみると、10くらいは想像できると思いますが、知らない大学を含めても20校くらいが総数であると考えてみます。すると、
54校 + 20校 = 74校
となります。

・医学部の人数
では、それぞれ何人くらい学生がいるのでしょうか?医学部は、実習や実験など、手取り足取り教える講義内容であるうえ、6年間にわたり学ぶ多いがあるため、労働集約的な教育体制とならざるを得ないことが想像されます。したがって、法学部や経済学部のように大型化は難しいと思われます。
いわゆるマンモス校と呼ばれる学校はともかくとして、一般的な総合大学の法学部や経済学部の1学年の人数はせいぜい500人規模でしょう。そこから、医学部の1学年の人数は、その半分の250人と仮置きしてみましょう。
この人数は高校の1学年の人数規模とも類似しているため、教育・指導ができる体制とみていいでしょう。
そのため、1学年あたりの医学部の数は、
74大学 × 250名/大学 =18,500人
とします。

(B)医師免許取得率

医師免許の取得率は、かなり高い割合と考えられます。
医学部を卒業して、医師免許を取らなかった、あるいは取れなかったという人はまれです。 近所で医学部の合格者が出れば話題になりますが、その後「医者にならなかったみたいよ」といった話はあまり聞いた事がないでしょう。

とはいっても、試験ですので合格率100%という事はありません。ほとんどの人が努力すれば到達できるラインと考え、90%程度と考えてみます。

(C)医療従事率

医師免許を持っていながら、医者にならないケースというのは、多くはありませんが時々見かけます。
例えば、製薬会社で研究職に従事するケースは珍しくないでしょう。最近では、コンサルティングファームに勤務する人もちらほらいます。

この背景には、研究職として大学に残るのは競争が激しく、ポストが限られていることや、大きい病院に勤務すると非常に過酷な労働条件になってしまうこと、さらには、開業するといっても経営の知識のない人がいきなり始めるのはリスクが伴うなど、医者としての仕事はそう簡単ではないという事があるのではないかと考えられます。

とはいえ、せっかく医師免許を取ってまで医師以外の職業を選択する方は少ないでしょうから、医者以外の仕事を選ぶ人は、10%程度と置き、医療従事率は90%とします。

(D)医者の平均活動年数

医者の仕事は25歳くらいからスタートして、60-70歳くらいまででいわゆる定年と考えると、 約40年間が現役の期間という事になります。
医者の中には80歳くらいまで現役で働いている方も多くおり、会社員と比べると勤続年数は長いでしょうが、中にはアーリーリタイアする方や医者をやめて研究職に転職、または途中で亡くなられる方もいるため、平均的には40年で問題なさそうです。

結果

以上を考慮すると、
18,500人 × 90% × 90% × 40年 = 599,400人
となります。

60万人ということは、日本の人口1億2000万人の0.5%にあたります。200人に1人の存在ということで、かなり少ない気もしますが、自分のすんでいる街に病院が何件くらいあり、その近隣エリアに何人くらいの住人がいるかを考えてみると、そう悪い数字ではないと思います。

ちなみに、厚生労働省が発表している「平成 30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」では、2018年12月31日時点で327,210名でした。

倍ほどの開きはありますが、面接でフェルミ推定を出されても、この程度の間違いであれば問題はありません。

フェルミ推定においてみられるポイントや解き方については、フェルミ推定の解き方というページで紹介してますので、そちらも是非ご覧ください。

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