フェルミ推定の例題です。
フェルミ推定を解く過程の計算の数値は、本来であれば場合分けをして緻密に算出する必要がありそうに見えますが、実際には細かくすればするほど精度は落ちていくことがあります。
本問では、山手線の人口を導き出す計算過程で大雑把な数字で仮置きした場合に結果はどうなるのか?ということを検証します。
アプローチ
山手線の内側の人口を計算するアプローチとしては、いくつか考えることが出来ます。
①東京の人口 × 山手線内の面積比
②人口密度 × 用途別土地面積
③駅の利用者数 × 夜間人口比率
といったやり方がアイディアとしてはあり得ますが、上記の計算式には、なかなか普段見聞きする数字から想像がつかないものが含まれています。
そのため、各項目の数値を緻密に算出する必要があり、なかなかハードな解法になりそうです。
今回はシンプルに、23区の人口がどれくらいいて、どれくらいの区が山手線内に位置していて、その区のうち居住区はどれくらいか?という点に着目してアプローチしていきます。
計算方法は
(A)23区の人口 × (B)山手線内にある区の割合 × (C)居住区の割合
で算出します。
(A)23区の人口
関東地方には日本の人口の1/3にあたる4000万人が住んでおり、うち東京にはさらにその1/3にあたる1,300万人、23区に限定すると、1000万人程度が住んでいます。しかし、この数字は必ずしも覚えておくべき数字ではありません。むしろ計算で算出したほうが面接官の印象はアップするでしょう。
それではどのように計算するかですが、今回はパレートの法則(8:2の法則)を使って算出してみます。
日本の人口1.2億人に対して2割の都道府県(約10都道府県)で8割の人口がいると考えると、10都道府県で1億人弱いることとなり、平均すると1000万人ということになります。
次に、10都道府県の中で偏りを加味して、東京の人口を1,500万人と考え、そこから23区・それ以外の市の人口を考えます。
山手線の外側は、ターミナル駅を除いてはほとんどが住宅街になっており、都心から離れるほど人口密度が下がっていきます。したがって、都心に近い23区に人口が集中しているということは、容易に想像できます。
少なくとも半分以上は23区内に住んでいることは明らかであるため、23区内に住んでいる人の割合を50%~100%の間のどこかに設定します。
推測にすぎませんが、間を取って75%が23区内に住んでいると考えれば、ある程度妥当性はありそうな気がします。
すると、23区内の人口は1,500万人 × 75% = 約1,100万人ということになります。
(B)山手線内の区の割合
東京に住んでいる方はある程度勘所があるかと思いますが、山手線の内側に区の大部分が収まっているところは、千代田区・港区・新宿区・文京区の計4区です。他にも山手線内にかかっている区はありますが、小さなところの集合体ですので1~2区分と考えてよさそうです。
そうすると、計5~6区分の面積が山手線内に存在していることとなります。今回は、コンサバに見積もって計5区分の面積があるとします。
しかし、東京に土地勘がない人は、どれくらい山手線内に区があるのか検討もつかないかもしれません。そんな時は、面接官に聞きながらこの手の情報を補うのも手です。
あるいは、都心5区と言われている千代田区・港区・中央区・渋谷区・新宿区が山手線内に位置しているとシンプルに考えても、大きな問題ではありません。
(C)居住区の割合
しかし、これらの区は東京の中でも特に都会であるため、ビジネス街も多くあります。つまり、人が住む場所ではないところも、面積としてカウントされています。
先に挙げた4区のうち、千代田区と港区はオフィス中心、文京区と新宿区は住宅街中心として、非常に単純化すると、
居住区 : オフィス区 = 1 : 1
として、居住区を全体の1/2として考えます。
答え
1,100万人 × 5/23区 × 50% = 120万人
以上が、(少し大雑把ではありますが)計算で導出された山手線内に住んでいる人口です。
120万人という人口ですが、政令指定都市と同じくらいの人口になったので、悪くなさそうです。
実際との差分
さて、山手線内の人口は120万人と推計しましたが、実際はどうでしょうか?
残念ながら明確なデータはないですが、都の調査「東京の土地利用」を参考にして積み上げで計算したいと思います。(少し見づらいですが、図の緑色の点線が山手線です。)
■大部分が山手線内に収まっている区
千代田区・港区・文京区
■半分が山手線内に収まっている区
渋谷区・新宿区、豊島区
他にもかかっている山手線内に位置している区もありますが、あまり大きな変動はないでしょうから、上記のデータと東京都の統計にある「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」を照らし合わせて計算します。
千代田区:6.7万人 × 100% = 6.7万人
港区:26万人 × 100% = 26万人
文京区:23万人 × 100% = 23万人
渋谷区:23万人 × 50% = 11.5万人
新宿区:35万人 × 50% = 17.5万人
豊島区:29万人 × 50% = 14.5万人
合計:約100万人
意外と近い数値になったのではないでしょうか。
以上のように、ある程度大雑把な数値でも、感覚さえ間違えなければ近い数値になることが分かります。
今後フェルミ推定を考えるうえでどうしても計算することが難しい数値があった場合、思い切りよく計算するのも1つの手です。
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