フェルミ推定の例題です。
比較的私たちの身近にいる犬の頭数を推計する問題ですので、どれくらいの世帯が何頭くらい犬を飼っているかということが分かれば推計できそうですが、重要なのはセグメンテーションの軸をどう切るかです。この記事を読むことで、セグメンテーションする際のコツがわかります。
アプローチ
飼育されている犬の全頭数を推計する問題です。 ブリーダーや警察犬など、仕事で飼育されている場合もありますが、ペットとしての飼育が圧倒的に多いでしょうから、すなわちペットの頭数の推計と考えてかまいません。
すると、アプローチは非常に単純です。”何世帯が犬を飼育しているか”、そして忘れずに”何頭飼っているか”をかけて算出できます。ただ、いきなり平均値の推計は難しいので、推計可能な単位にセグメンテーションして考えます。
(A)世帯数 × (B)犬の飼育率 × (C)飼育世帯の飼育頭数
続いて世帯数をセグメンテーションするにあたり、軸としては何がふさわしいか?ということを考える必要があります。
筋の良い軸を導き出すためには、導き出したいことについて違いが出るセグメンテーションをすることが重要です。
今回では、”犬を飼っている人はどんな人か?”ということを考える必要があります(同時に”こんな人は絶対飼わないだろうな”を考えるといいです)。
年収や年代、性別など考えられますが、最もしっくりくるのは世帯人数でしょう。夫婦2人世帯よりも子供のいる世帯の方が犬のイメージにぴったりですし、一方で単身世帯は犬を飼っているイメージがわきませんので、世帯人数をキーにセグメンテーションすることが良さそうです。
(A)世帯数
ではまず、日本の総世帯数約5,000万を世帯人数ごとにセグメンテーションしてみます。
(総世帯数5,000万という数字が分からなければ、”人口は1.2億人として、世帯人数は平均3人くらい?”ということで4,000万世帯としても問題ありません。)
セグメンテーションするにあたり、単身から3世帯同居など様々な形態が考えられますが、あまりバリエーションを増やすと推計しにくいので単純化して考えます。 子供のいる世帯は4人、夫婦の世帯は2人、単身は1人としましょう。
仮に3等分して、それぞれのタイプの世帯数が約1,600万ずつだとすると、1世帯あたりの人数は2.3人((4人+2人+1人)÷3)となります。
去る2020年4月にアベノマスクが1世帯に2つずつ配られたことを考えると、2.3人という数値は妥当のように思えます。
(B)犬の飼育率
続いて犬の飼育率ですが、まずは最も高そうなセグメントから想定し、他のセグメントはそれとの相対感で想定します。
ということで、まずは子供のいる4人世帯からです。周りでどれくらい飼っているかを想像すると、半分以上が飼っているということはほとんどの場合ないと思います。
とすると、0~5割の中でどのあたりなのかというところを絞り込んで行くことになります。では、1割なのか3割なのか5割なのかでいうと、多くの人が1割もしくは3割が妥当と感じるのではないでしょうか。
1割を選んで推計しても良いですし、3割を選んでも大きな問題ではないです。
この記事では間を取って2割で計算します。
続いて夫婦2人の世帯ですが、子供世帯よりも少し割合が落ちるでしょう。 子供のいる世帯の2割を基準とすると、その半分の1割とします。
単身世帯については、さらに割合が落ちるでしょうが、社会人一人暮らしで犬を飼っているケースは時々あります。少々強気な数字にも思えますが、0.5割と考えます。すると
4人世帯:1,600万 × 20% = 320万世帯
2人世帯:1,600万 × 10% = 160万世帯
1人世帯:1,600万 × 5% = 80万世帯
合計:約560万世帯
が犬を飼っていることになります。この数字は、全世帯の約11%が犬を飼っているということを意味しており、妥当性はありそうです。
(C)飼育世帯の飼育頭数
ここまでで犬を飼っている世帯数がわかりましたが、この問題が聞いているのは飼育されている犬の頭数であるため、 世帯当たりの飼育頭数を考慮します。
「世帯あたりの飼育頭数」の意味するところは、”犬を飼っている世帯は平均何頭飼育しているか?”ということですから、必ず1よりも大きい数になります。 1頭だけ飼っている世帯が圧倒的に多いでしょうから、多くても2を超えることはなさそうです。
(稀にテレビで数十頭飼っている人がインタビューされていることはありますが、異常値として無視して良いです。)
世帯人数によって家の形態がより犬を飼いやすい形態になりますので、
4人世帯 > 2人世帯 > 1人世帯
となるように世帯人数ごとの飼育頭数を設定します。仮に4人世帯が10世帯あったとすると、大半が1頭飼いでしょうから、次のように分布しているとすれば、平均は1.6頭となります。
(3頭以上飼っている世帯は、計算を簡単にするため、3頭として計算します。)
1頭飼い:6世帯
2頭飼い:2世帯
3頭以上飼い:2世帯
さらに、世帯規模により面倒を見ることのできる犬の頭数を加味して、傾斜をつけます。
4人世帯:1.6頭
2人世帯:1.4頭
1人世帯:1.2頭
この数値はあくまでも置きの数値となりますが、周りで犬を飼っている世帯を想像してみても、あまりずれた数値ではないのではなないでしょうか。
答え
すると、飼育されている頭数は
4人世帯:320万 × 1.6頭 = 512万頭
2人世帯:160万 × 1.4頭 = 224万頭
1人世帯:80万 × 1.2頭 = 96万頭
合計:832万頭
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