フェルミ推定の例題です。占い師の人数推定というビジネス色の薄い問題ですが、納得感のある論理を積み重ねるという考え方の基本は同じです。
ヒント
占いをよく利用するという人であっても、占いという業界をよく知っているという人は極めて少ないでしょう。占いの業界を一望するようなマクロな情報、もしくは代替できるような情報は望むべくもないという問題です。
となると、ユーザーの行動から推計する方法で解く事になりますが、一人の人間が何歳の頃に何回利用するというアプローチは、今ひとつ具体性に欠けてしまいます。占いというものが人生にどんな場面で必要とされるのか、具体的にイメージしながら考えるやり方をとるべきでしょう。
アプローチ
日本全国の占い師の合計を求める問題です。一般的な手がかりが非常に少なく、マクロな市場規模からの推計は望み薄な問題です。 そうなるとユーザーベースからの推計か、もしくは占い師の立場から推計するという方法しかありません。
しかし、どれくらいの人が占い師をやっているかなど、かなり限られた人しか想像のつかない事ですので、自動的にユーザーベースからの推計を選ぶ事になります。
アプローチは、ユーザーから市場規模を推計し、占い師の平均的な収入から人数を推計するという事になります。
(A)人口 × (B)年間占い利用回数 × (C)平均単価 ÷ (D)占い師の年間収入
(A)人口
占いを利用するのはほとんど女性と考えていいでしょう。男性はカウントしなくとも、せいぜい5%程度でしょうから、無視する事にします。すると対象となる人口は1億2,000万人の半分の6,000万人という事になります。
(B)年間占い利用回数
ではこれらの人がどれくらい占いを利用するか、どのように考えればいいでしょうか?
世代別に利用回数を想定して積上げるというのも一つの方法ですが、それよりも占う事柄別に想定する方が、具体的なイメージをしながら考えを進める事ができます。
例えば、恋愛の占い、結婚の占い、などなど、占いに行きたくなりそうな節目が一生の中にいくつかあります。それを挙げてみましょう。
(1)恋愛(中学~20代前半)
(2)進路(高校~大学)
(3)仕事の悩み(20代前半)
(4)結婚(20代前半~30代)
(5)住宅購入(30代~40代)
(6)子供の将来(30代~40代)
と、結構あるものです。では、これらそれぞれについて、占いを利用する率と回数を考えてみます。
(1)恋愛
最も占いのニーズが多いと考えていいでしょう。恋愛は論理的な思考や合理性と相容れないもので、そういったものを超越した占いとの相性がいいからです。かなり多くの人が利用すると考えていいでしょうから、利用する率は5割程度と考えます。そして、中学、高校、大学、社会人と恋愛をするたびに思い悩むチャンス(?)はありますので、利用回数を4-5回と考えます。
(2)進路
進路の場合は、合理的に考えるべき事ですので、あまり占いに頼るという人は多くないかもしれません。ただ、最後の最後、後は運任せというときにはやはり頼りたくなるものです。そう考えると、2割くらいの人が利用し、1-2回程度の利用と考えて妥当な水準ではないかと考えられます。
(3)仕事の悩み
仕事の悩みも進路同様、頭を使って考えた最後の最後にすがるように利用するものと考えるべきです。さらに、進路と違って締め切りがあることではなく、日常の中で解決するものなので、占いに行くきっかけは乏しいといえます。そこで利用率は1割程度、一方で、悩む期間は長いので、利用回数は多めの4-5回と考えます。
(4)結婚
結婚は恋愛に次いで占いのアツいテーマです。一生ものの選択を迫られる中で、いくら論理的に考えても、いい面も悪い面もあり、他の選択肢もあり、将来もしかしたらミラクルがあるかもしれないという淡い期待もあり、、、最後に決定に至るのは”決め”の問題です。そこにはやはり理屈を超えた気持ちが必要となります。利用率は高めに見るべきでしょう。5割と考え、回数については、恋愛よりも少ないでしょうから、2-3回と考えます。
(5)住宅購入
住宅の購入に関しては、論理的な意思決定がなされるものと考えがちでしょうが、実は風水や様々な迷信など、理屈とかけ離れた選択基準も数多くある事柄でもあります。実際購入に際して、ネガティブチェックをするという意味で占いにいくという人は数多くいるようです。利用率を3割程度と見て、回数はそう何度も行く事もないでしょうから、1-2回と考えます。
(6)子供の将来
子供の将来は、非常に多くの親が楽しみにし、心配もしている事柄です。占いで何を言われても生活が変わる事はないでしょうが、何に気をつけるべきか、どんな楽しみがあるのか、知りたいという気持ちは非常に強いでしょう。
そもそも子供を産んだ女性という時点で母集団を6割程度に絞る必要があります。その中での割合と考えると、3割程度がいいところでしょう。回数としては、2-3回とします。
(C)平均単価
単価はピンキリでしょうが、30-60分くらいの占いとすれば、3千円~1万円程度はかかるでしょう。占い師の立場から考えれば、毎日何人もお客さんが来る人気占い師はほんの一握りでしょうから、ある程度単価を高めに設定したいでしょう。そういう意味で”いい値段”の水準と考えるべきでしょう。間の6,500円を平均単価として計算します。
女性の人口6,000万人のかけ算と、年間利用回数に換算するための80年で割る計算もここでまとめて行います。
6,000万人 × 5.35回 ÷ 80年 × 6,500円 = 260億円
(D)占い師の年間収入
占い師という職業はあまり多くの方がなるものではありません。好きでやっている人が多いものの、収入面ではさほど良くないのではないかと想像されます。もし収入が非常に良ければ、もっと多くの人が選択するはずだからです。
おそらく占いだけでなく、複数の収入源を持っている”兼業占い師”が多いのではないかと考えるのが自然だと思います。それだけでは生活できないような水準の収入が、占い師の平均収入と考えても不自然ではないでしょう。
例えば、平均収入を200万円と考えると、稼働日を200日とすれば、1日1万円を稼ぐのが平均的な姿という事になります。お客さんとしては1-2人程度です。少し多いような気もしますが、無理のないレベルでしょう。これを平均収入と考えても大きく外れなそうです。
結果
260億円 ÷ 200万円 = 13,000人
となり、1万人に1人が占い師という事になります。
地域的な分布で考えれば、各都道府県に平均で300人弱がいるという事です。そう考えると悪くない水準のような気がします。
答え:13,000人
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