コンサルタントとは何者か?

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この記事はコンサルタントとは何者で、なぜコンサルティングにニーズがあるかについて書いています。新卒者も転職者も、コンサルタントの仕事を知る最初の一歩としてこの記事を読むと、コンサルタントの魅力や、なぜコンサルタントが求められているのか?ということがわかります。

見えにくいコンサルタントの実像

 「コンサルタントって何やる仕事ですか?」
これは、コンサルタントを志望する学生や転職者から最も多く聞かれる質問である。今やコンサルタントは新卒者にも転職者にも人気の職種となった。しかし、コンサルタントになりたいと希望する人たちですら、どんな仕事なのかよくわかっていないというのが実情だ。

 分かりにくい最大の理由は、コンサルタントと名の付く仕事は非常に幅が広く、しかもその幅は時代とともに拡大してきているからだ。「企業の課題を解決する仕事だよ」と抽象的に説明すると、間違ってはいないが、何も言ってないのと同じくらいに意味のない説明になる。かといって業務を具体的に紹介すると、コンサルティングの一部をとらえて全体を語ったかのような気持ち悪さが残り、うまく説明できたような気がしない。

 具体的な仕事が想像できないままコンサルタントになる人が多いため、次のような現実とのギャップに直面する人も出てきてしまう。

・もっと華やかな仕事だと思っていたが、地味でつらい仕事だった
・純粋に頭で戦う仕事だと思っていたが、悪い意味で人間臭かった
・個人主義のさっぱりした会社だと思っていたら、人間関係がギスギスしていた

コンサルタント=経営の科学者

 では、どう説明すればコンサルタントの仕事を理解してもらえるのか?
よく使われる説明としては、「コンサルタントとは、企業が抱える問題を解決するプロフェッショナルである。」というものだが、もっと特徴を端的に表すならば、「経営の科学者」という表現がぴったりだ。

 コンサルティングはアメリカで100年以上前に誕生した。革新的であったのは、企業経営がまだ、勘と経験で戦っていたところに、科学的なアプローチを持ち込んだことだった。
「元祖コンサルタント」と言われる、フレデリック・テイラーは、自分が勤めていた工場での作業を科学的なアプローチで改善し、経営に科学的な概念を持ち込んだ。作業を細かく分割し、作業時間の短縮を突き詰めることで、作業の効率化を実現したのである。

 経営を科学的にみる目線がなかった時代に、作業を細かく分析する手法は、きわめて奇異に映ったであろうことは想像に難くない。テイラーは現代風に言えばかなり「オタク」であったろうと思われる。それでも、科学的アプローチには非常に優れた点があり、コンサルティングという新しいサービスは世界中で受け入れられていった。3つの理由があると考えられる。

コンサルタントが求められる理由①:明確な判断

 1つ目の優れた点は、明確な判断ができることである。科学的アプローチの基本は、数字で答えを出すことだ。答えが数字で出れば、経営判断において迷う余地が少なくなる。

 例えば、ある食品会社で調味料の新商品を出す場合に、いくらで販売すればいいかというプライシングの問題があったとしよう。これは新商品の利益を決める重要な問題だが、多くの場合感覚や経験で決められてしまう。

 商品を企画したマーケティング部門は、「パッケージの高級感があるから高めでも売れる」、「競合の値段から大きくは差をつけられないだろう」と言い張り、営業部門は「安くしないと売れない」と応酬する。部門の利害関係の中で落としどころを見極めながら着地させるというものだ。このプロセスはある意味民主的だが、「利益を最大化する価格はいくらなのか?」という問いに対する”正解”を探すアプローチとしては主観に頼りすぎており、形式的には決まったとしても納得感が得られにくい。

 コンサルタントがこのお題をもらうならば、消費者アンケートや、店舗の棚を再現したテストを行い、利益を最大化できるポイントを客観的な手法で算出するアプローチをとる。こうして出された答えは、主観に左右される余地を排するため、合意形成に結び付きやすくなる。

コンサルタントが求められる理由②:再現性の高い解決策

 2つ目の優れた点は、様々な事象に汎用的に適用できる再現性を持っていることだ。コンサルティングから生み出された再現性の高い有名な理論の一つとして、「経験曲線」がある。製造業において累積生産量が増えていくと、コストが減少していくという法則だ。何を作っているかによって差はあるものの、製造業であれば、世界のどの企業であっても適用することができる。科学的な検証を経て客観的に正しいと証明するからこそ、ある企業のたまたま起こった事例にとどまらず、再現性のある理論にまで進化させることができる。

 再現性の高い解決策を提供できるということは、海外での成功例や、他業界での成功例を「輸入」して、確度の高い”正解”を作ることができる。もちろん、コピーしてそのままで出来上がりという雑な仕事をすることはないが、成功した実績があるものが下敷きになっているということは、クライアント企業内での合意形成おいて強力な材料になるため、歓迎されることが多い。

 現在もコンサルティングの基本は科学的アプローチだ。クライアント企業から相談を受けて調査や分析をすると、非合理的なままになっている事業や業務が数多く見つかる。コンサルタントはこうした問題を論理的に解明し、解決策を提示することで成果を出している。

扱うテーマが変わっても、科学的アプローチは変わらない

 コンサルタントが活躍する領域は、この10年ほどで大きく変化し、拡大してきた。経営戦略、オペレーション、ITの企画だけを担っていた存在から、企業とともに企画を実行するようになり、実務の一部まで担うことも多くなってきた。

 扱うテーマが変わっていく中でも、コンサルタントは依然として「経営の科学者」だ。この科学的アプローチこそが、コンサルタントの付加価値の本質であり、それが認められているからこそ、活躍の場が広がっているといえる。

 今後もコンサルタントは「経営の科学者」として、企業の戦略から実行までのあらゆる領域の課題解決を担う存在であることは間違いなさそうだ。

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