《フェルミ推定》東京の1日のタクシーの売上は?

タクシーの売上 フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。東京にいれば毎日のように見るタクシーですが、1台あたりの売上高はどれくらいになるのでしょうか?
時間帯ごとの売上高を積み上げるという方法も1つありですが、曜日や天気、気温によって大きく異なりそうです。
本問では、会社として利益を出すためにはどれくらいの売上高が必要か?という点に着目します。

アプローチ

 前述のように、時間帯ごとの売上高を積み上げるという方法もありですが、曜日や天候や気温によっても変動が大きいため、1つ1つ考えているとかなり時間がかかりそうです。
そのため、今回は会社目線で、”利益を確保するためにはどれくらいの売上高が必要か?”というマクロアプローチを取って推計します。
シンプルですが、1人あたり売上高 = (A)1人あたりコスト + (B)1人あたり利益として計算します。

(A)コスト

 コストを考えるにあたり、一番大きいのは①ドライバーの人件費でしょう。また、会社はドライバーだけで運営されているわけではないため、②バックヤードで支える人たちの人件費もかかってきます。他には車を運転しているわけですから、③車両の減価償却費や④ガス代がかかります。
ドライバー人件費
 会社が負担する人件費とは、ドライバーの給与だけではありません。社会保険料は会社員と会社で折半ですし、雇用保険やその他福利厚生費等も含めると様々なコストがかかります。そのため、給与とその他人件費の2つを考えたいと思います。

  • 給与
    日本の平均年収は450万程度であるということは、多くの方が知っている事実でしょう。今回の問いは東京であるためもう少し高いと考え、年収500万円程度で考えたいと思います。
  • その他人件費
    正確な計算は知識がないと難しいですが、社会人の方は自分の額面と手取りの給与の差をベースに考えると大きなズレはないでしょう。今回は、金額を、年収の20%とします。そうすると、年間で100万円程度になります。

②バックヤードで支える人たちの人件費
 大きな会社であれば間接コストは小さいでしょうが、ここでは小さな会社のコストを想定し、保守的に考えます。計20人程度の会社で、社長・総務・経理、オペレーターなどあわせて3~4人、それ以外がドライバーだとすると、ドライバー:バックオフィス=5~6:1です。
そうすると、ドライバー1人に対して約0.2人のバックオフィスの人がいることとなります。
バックオフィスの年収が400万/年だとすると、社会保険料等を入れて500万円/年程度が会社のコストとなります。
今回はドライバー1人あたりのコストを考えているため、0.2人分(100万円)のコストがドライバー1人あたりのコストに上乗せされます。

③車両の減価償却費
300万円の車両を、減価償却期間5年間として、
300万円 ÷ 5年 = 60万円/年
とします。

④ガス代
 1日の労働時間を8時間とし、運転していて疲れてくる2時間に1回15分程度の休憩を取るとすると、8時間のうち1時間は休憩時間となります。そうすると、1日に7時間走ることとなります。
車の一般道の平均時速は30km/h程度ですから、1日7時間であれば、210km走ることになります。停車して待っているタクシーもあるじゃないかと思われるかもしれません。タクシードライバーによっては、長距離を狙って長時間待つドライバーもいますし、一方で、ずっと街を走ってお客さんを見つける流しのドライバーもいます。
 ここでは、これらのタイプによる稼ぎの差はないと考えます。なぜなら、いずれかのタイプが稼ぎやすいのであれば、そのタイプに”転身”するドライバーが増え、結局は稼ぎの差はなくなるまで調整されるからです。また、コスト面で見ても、コストに大きく不利なタイプがあれば、会社からコスト高なタイプは是正されるはずです。したがって、1日中走っているドライバーを基準に考えて問題ないでしょう。
 あとはこれを金額換算すれば良いですが、ガス代の計算は一般車両と異なりLPガスを利用しているため、少し難しいです。ガソリンでしたら130円/Lくらいですが、タクシーの場合はどうでしょうか。
ガソリンより高いとなると、事業者としてはLPガスを利用するメリットがないため、安いことは間違いないでしょう。
ここでは、キリの良い100円/Lとして、燃費は10km/hとします。
すると、210km ÷ 10km/h = 21L
21L × 100円 = 2,100円
年間250日走るとすると、約50万円となります。
以上が、ガス代とします。

合計
以上のコストを合計すると、
600(ドライバー人件費)+100(バックオフィス負担分)+60(減価償却費)+50(ガス代)=約810万/年となります。

(B)利益

 日本の営業利益率の平均は5%程度ですが、タクシー業界はどれくらいなのでしょうか?
高収益な業態ではない一方で、タクシー料金は決められてるため、あまり価格競争起きないず、低収益ではないと考えます。そのため、中程度とし、平均の利益率を適用します。
 810万円のコストに5%の利益としてを上乗せするため、利益額は約40万円程度とします。

答え

1年間の売り上げは850万円程度ですので、ここから1日あたりの売上高を計算します。
先ほどガス代の計算のときに250営業日としましたが、こちらを適用し、
850万円 ÷ 250営業日 =3.4万円

以上が、タクシーの1日当たりの売り上げとなります。

コメント