《フェルミ推定》今この瞬間に世界で飛んでいる旅客飛行機の数は?

飛行機の数 フェルミ推定対策

フェルミ推定の例題です。
”この瞬間に世界中で”という問いは、フェルミ推定らしい、誰も知らない数字を問う問題です。このような概念で数字を考える機会などあまりありませんので、そう簡単には、どう計算すればいいか想像がつかないものです。しかし、これは実は単純なフローを求める問題です。アプローチは様々ありますので、それぞれの問題でどのアプローチが適しているのか、多くの問題にチャレンジすることで慣れることが重要です。

アプローチ

 いくつかのアプローチが考えられますが、航空業界にいる人でもない限り、予測可能な数値が限られているため、アプローチを間違えると答えに行き着くまでに非常に苦労してしまいます。
・世界にある飛行機の台数から、稼働時間を推測し、ストック→フロー変換する
・航空航路における飛行機の間隔(車でいう車間)の制約条件から予測する
・航空管制のリソースの制約から予測する
・パイロットの人数を推計し、稼働の制約から予測する
など、アイデアとしては面白いものの、どうにも予測が難しい変数があり、答えにたどり着くことが困難です。

 そこで、推定するモデルの核となる部分は、あくまで想像がつきやすい”日本に発着する飛行機”として、それを世界の飛行機に拡大推計することにします。
拡大推計するには、人口比や面積比などいくつか考えられますが、GDP比が納得感があるのではないでしょうか。飛行機の機体は限られたメーカーが製造しているため、世界中で価格は統一されています。したがって国の経済力に応じて飛行機が飛んでいると考えて問題ないでしょう。

世界中で飛んでいる飛行機 = 日本で飛んでいる飛行機 ÷ 世界のGDPに占める日本のGDPの割合

世界のGDPに占める日本のGDPの割合

世界における日本のGDPの割合は、なかなか数字で抑えられていないと思いますが、日本は人口の順位よりもGDPの順位の方が高いことを考えれば、人口構成比1.2億人÷60億人=2%よりもGDP比の方が多いことが予測されます。
問題は2%よりどれくらい上か、なのですが、”世界に比べ日本の1人あたりGDPはどれくらい高いのか?”という点から推計します。

世界の人口の2割を占める中国のGDPは、10年前に日本を抜きました。人口10倍の国がGDPの総額で日本を抜いたということは、1人当たりGDPはその時点では1/10でしたが、その後成長しているということになります。
経済成長率が2桁近くを継続している国ですから、人口が変わっていないとすれば、GDP成長率がほぼ横ばいの日本と比べて、1人あたりGDPは10年前に比べ2~3倍になりますので、日本の1/3になっていると考えましょう。中国が世界の平均値に大きく影響していることを考えれば、中国の1人あたりGDPを世界標準と考え、日本の1人当たりGDP:世界の1人当たりGDPを3:1と考えて妥当性は高いといえます。
さて、ここから世界における日本のGDPの割合を出す必要がありますが、下記の式で算出したいと思います。
日本の人口:世界の人口= 2 : 100
日本の1人あたりGDP:世界の1人あたりGDP(中国の1人あたりGDP)= 3 : 1
日本のGDP:世界のGDP=6(日本の人口 × 1人あたりGDP):100(世界の人口 × 世界の1人あたりGDP)
したがって世界のGDPに占める日本のGDPの割合は、6%となります。

日本で飛んでいる飛行機

正確に意味を把握すると、この瞬間に日本を離発着して飛んでいる飛行機の数のことです。
ただし、世界のGDPで拡大推計することを考えれば、離発着両方をカウントすると、飛んでいる飛行機の数をダブルカウントしてしまうことになります。(日本発の便を世界に拡大推計すれば、各国の出発便の数をカウントできますが、日本到着便まで含めて拡大推計すると、各国の離発着便をすべてカウントすることになり、求めたい数の2倍になります)
そこで、日本で飛んでいる飛行機=日本を出発する飛行機のうち、今飛んでいる数と解釈します。

では、この数をどのように推計するか、です。
日本を発着する飛行機の数は、国内線と国際線に分けて考えます。
国内線は、ほとんどの都道府県に空港があり、地方便が飛んでいますが、圧倒的に数が多いのは、羽田(東京)、伊丹(大阪)、中部(愛知)、福岡、新千歳(北海道)などの主要都市の空港です。これらの空港から出発する便が8割を占める(パレートの法則)と考えれば、大きく外さないと考えていいでしょう。
例えば羽田の国内線の出発ロビーで見るボードには、10分刻みで出発の予定が掲載されています。国内線が1便2時間ほどのフライトだとすると、120分÷10分=12便くらいは、ある瞬間に羽田発の飛行機が飛んでいることになります。首都圏3000万人の空港である羽田に対して、伊丹は関西圏2000万人を背景にしており、中部、福岡、新千歳は500万人~1000万人の空港と考えれば、羽田の1.5倍程度が飛んでいると考えられ、18便、合計30便がこれらの主要空港発で飛んでいることになります。
これが国内線の8割に当たるとすると、およそ40便が国内線で今この瞬間に飛んでいる飛行機となります。

では、次に国際線です。
日本を出発する国際便がどれくらいあるか、主要路線から予測してみます。
日本を出発する便の多くは、成田、関空、セントレアから出発しています。
行先は次のようなところでしょう。
・アジア:シンガポール、バンコク、香港、台北、北京、上海、ソウル、ジャカルタ、ムンバイ
・北米:ニューヨーク、ロサンゼルス、ホノルル、ワシントン
・欧州:ロンドン、パリ、フランクフルト、マドリード
・オセアニア:シドニー

アジア便はある程度本数が多いかもしれませんが、それ以外は到着の時間を踏まえて、限られた時間に限られた便を運航しています。
アジア便は1時間に1本、その他主要都市にはその半分と考え、
アジアの都市へは20便、その他の主要都市には10便が日本から出発していると置くと、
20便×9都市=180便
10便×9都市=90便
アジア便の飛行時間が平均4時間、それ以外の路線の飛行時間が8時間とするならば、
180便÷24時間×4時間=30便
90便÷24時間×8時間=30便
計60便が、ある瞬間に飛んでいる飛行機となります。
こちらもパレートの法則を利用し、他の地域宛の飛行機もカウントすると、主要路線の便数が8割に当たるという考え方ができます。
そのため、主要路線(60便) ÷ 80% = 75便
こちらが、国際線で飛んでいる飛行機の数と考えます。

答え

国内線と国際線を合わせて、115便が日本を出発して飛んでいる飛行機となりますので、
これを世界に拡大すると、115便÷6%=約1,900便が今この瞬間に飛んでいる飛行機ということになります。

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